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人間国宝・井上萬二さん 生涯求めた白磁の美「自分の道に努力を」【佐賀県】

2025/07/22 (火) 18:19

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人間国宝、井上萬二さんが先週、96歳でこの世を去りました。白磁の美を追い求め、ろくろに向かい続けた井上さん。有田の、そして日本の陶芸界をけん引した生涯を振り返ります。

柔らかな白い肌なめらかな曲線、「白磁」。
土と語り、真摯にろくろと向き合いながら究極の美を追い求めてきた人間国宝、井上萬二さん。技と心が一体となり寸分たがわぬ造形、「白磁」が生まれる…そこには陶芸家、井上萬二の生涯そのものが映し出されています。

【井上萬二さん】
「白磁というのは、ただ白だから白磁ではないんです。私に言わせたら形がいいから白磁で残すんだ」

井上萬二さんは1929年有田町の窯元の家に生まれました。
十二代酒井田柿右衛門や、ろくろの名人とうたわれた奥川忠右衛門に師事し、ろくろの技術を磨きます。

【井上萬二さん】
「奥川さんが大きな壺を作っているのを見て技を盗んで、夕方退社された後に一人残って壺を作っていた…師を超えるということはあり得ないけど師に近づこうという努力はしなくてはいけないですね」

13年の修行を経て県窯業試験場の職員となり、アメリカの大学で講師なども務めました。その後自身の窯を開き、形そのもので美を表現する「白磁」の第一人者に。
そして1995年66歳のとき「白磁」の重要無形文化財保持者、いわゆる「人間国宝」の認定を受けました。

【井上萬二さん】
「全然考えもしていなかった。びっくりしたのと身に余るような気持ちでどうとっていいか。心の中では震えるような気がした」

【井上萬二さん】
「形が良いから白磁だ。そのかわりどんなものでも作る技術がないとだめ。技術があっても想像するセンスがないとダメ。生み出す心が無いとダメ。センスがあっても技術が無いとダメ。技術とセンスと人間性によってできるのが作品なんです」

究めてもなお努力を重ねた井上さんの原点となっているのは海軍飛行予科練習生時代の経験です。毎年開かれる追悼式にも欠かさずに参加し戦争体験を伝える活動も続けました。

【井上萬二さん】
「今の日本の平和が永遠に続くことを祈っております」

【井上萬二さん】
「15、16、17の少年時代に(軍事)教育を受けたということは自分の終戦後の仕事に大いに役に立ったと思うんです。精神的にですね」

50年以上全国各地で開かれた井上さんの個展の中で、自身が最も印象に残ったと語ったのが萬二さん、息子の康徳さん、孫の祐希さんによる三代展です。

【井上萬二さんの作品】
寸分の狂いもないなめらかな曲線が白磁の美しさをより一層際立てる井上さんの作品。

【康徳さんの作品】
白磁の美しさと淡い青の釉薬とが見事に調和した康徳さんの作品。

【祐希さんの作品】
そして自由で独創的なアイデアから生まれた祐希さんの作品。

三代での展覧会は井上さんの念願でした。
【井上萬二さん】
「先人たちの伝えてきた技術を完全に習得して、その上に現代の自分の発想で描いていくのが作品ですから、それが伝統となっていく」

気さくな人柄で愛され、後進の育成にも力を注いだ井上さん。
生涯たゆまぬ努力から生み出された透き通るような白磁は、今も見る人の心に深く染み入る美しさをたたえています。

【井上萬二さん】
「俺は歳だと思わないでいつまでも現役で万年少年じゃないとだめなんです」
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