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2025.04.29

「陶芸はスポーツ」元ラグビー日本代表 小柳泰貴が挑む古伊万里の再興と独自の表現

佐賀県武雄市の静かな山里に佇む「貴祥堂」。この由緒ある窯元で、ひときわ異彩を放つ陶芸家が、土と炎に向き合っています。その名は小柳泰貴さん。かつてはトップリーグのコカ・コーラレッドスパークスで活躍し、日本A代表にも選出された屈強な元ラグビー選手です。鍛え上げられた肉体から生み出される、繊細で力強い作品の数々。伝統を受け継ぎながらも、アスリートならではの視点と情熱で有田焼の新たな可能性を切り拓こうとする小柳さんの挑戦を追いました。

異色の転身! ラグビーで培った精神を陶芸の世界へ

リポーターが貴祥堂の工房を訪れると、土と真剣に向き合う小柳さんの姿がありました。現役時代からは想像もできないほど、その手つきは繊細で、一点一点に魂が込められているようです。「最初は力の加減が全く分からず、大切な作品を何度も壊してしまいました」と小柳さんは苦笑します。しかし、その失敗から学び、試行錯誤を繰り返すことで、今では轆轤(ろくろ)を自在に操る技術を習得しました。

400年の時を超える挑戦 古伊万里の美を現代に蘇らせる

小柳さんが情熱を注ぐのは、江戸時代に隆盛を極めた「古伊万里」の再現です。失われた当時の陶石、顔料、そして焼成方法を独自に研究し、400年前の職人たちの技を現代に蘇らせようと日々試行錯誤を重ねています。
工房に並ぶのは、息をのむほど美しい青と白のコントラストが際立つ器や、繊細な花柄が描かれたポット。「昔の職人さんたちが作った器が、400年以上経っても色褪せずに残っている。その事実に、ただただ感動するんです。自分も、未来に残るような器を作りたい」と、小柳さんは静かに語ります。その言葉には、古の職人たちへの深い敬意と、自身の新たな挑戦への熱い意欲が感じられます。

「陶芸はまさにスポーツ」アスリートの魂が息づく制作現場

「陶芸は、本当にスポーツだと思って取り組んでいます」。小柳さんの言葉には、現役時代に培ったストイックな姿勢が垣間見えます。技術向上のために日々の練習を欠かさず、作品のデータを取りながら徹底的に自己分析を行う。その姿は、まさにトップアスリートそのものです。
工房の一角には、トレーニングマシンも置かれています。「健康な体があってこそ、良い作品が生まれる」という信念のもと、体力づくりにも余念がありません。

父の背中を追いかけて

小柳さんにとって、陶芸は幼い頃から身近な存在でした。「貴祥堂」は実家であり、両親や職人たちが土と向き合う姿を見て育ちました。「小さい頃から、焼き物を作るのも、見るのも好きだったんです」と懐かしそうに語ります。

ラグビーという全く異なる世界で頂点を目指した小柳さんが、再び陶芸の道を選んだのは、父である陶芸家の背中を改めて見たことがきっかけでした。「父の仕事を間近で見るようになって、その凄さを改めて実感しています。いつか父のような、いや、それ以上の陶芸家になりたいと思っています」。その言葉には、父への深い尊敬と、自身の成長への強い決意が込められています。

伝統と革新の融合 小柳泰貴が見据える有田焼の未来

現在、小柳さんは有田焼の伝統的な皿の形を作る「成形」の技術を徹底的に磨いています。「先人たちが築き上げてきた伝統をしっかりと受け継ぎながら、その上で自分にしかできない表現を追求していきたい」と、未来を見据えます。

400年の歴史を持つ有田焼。その長い歴史の中で、異色の経歴を持つ小柳さんが持ち込んだスポーツマンシップという新たな風は、有田焼の可能性を大きく広げるかもしれません。

貴祥堂では、陶器市の時期に合わせて特別な展示・販売会を開催しています。ぜひこの機会に、元ラグビー日本代表という異色の経歴を持つ陶芸家、小柳泰貴の作品に触れてみてください。土と炎、そしてアスリートの魂が織りなす、新たな有田焼の世界がそこにあります。

【2025年4月23日放送 かちかちLIVE つぐまさがGO!より】

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