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2026.06.01

同じものは二つとない——鳥栖の山に佇む窯元「魚蓮坊窯」の、器に宿る物語

佐賀県鳥栖市の山の中腹に、唯一無二の焼き物が並ぶ窯元があります。
彫刻を学んだ陶芸家が、手びねりで一つひとつ丁寧に成形し、伝統的な上り窯でじっくり焼き上げた器たち。
同じものが二つとない、豊かな表情とぬくもりが、多くの人を魅了しています。

「世界中の人と、陶芸を通してつながりたい」

そんな想いを込めながら生み出される作品には、作り手の息づかいと優しさが静かに宿っています。

山道の先に現れる、趣ある窯元

鳥栖市の山道を進んでいくと、木造の趣ある建物が姿を現します。

軒下には花鉢や多肉植物が並び、瓦屋根に絡まる蔦が、長い年月を重ねてきた風景を感じさせます。

ここが「魚蓮坊窯」です。

店内に足を踏み入れると、個性豊かな作品がずらり。素朴さの中に力強さや温もりを感じる器たちは、どれも存在感たっぷりです。

彫刻と伝統が交わる、ここだけの焼き物

父親の代から続くこの窯を、現在受け継いでいるのが息子の松尾伊知郎さんです。大学では陶芸ではなく彫刻を学んだという、異色の経歴の持ち主。

その経験は作品にも色濃く反映されており、彫刻のような存在感を放つオブジェ作品と、父の代から受け継いだ伝統的な焼き物の両方を手がけているのが特徴です。

たとえばコーヒーカップひとつを見ても、取っ手からなめらかに伸びる流線型のフォルムが印象的。
「使いやすさ」を大切にしながらも、「自分にしか作れない形」を追い求める姿勢が、器の細部にまで息づいています。

火と対話しながら生まれる一点もの

魚蓮坊窯の作品は、すべて手びねりで成形し、伝統的な上り窯で焼き上げられます。
上り窯とは、斜面を利用して複数の焼成室を階段状に連ねた窯のこと。横にある焚き口から薪をくべ、下の段から順に熱が上へと巡っていく構造になっています。

焼成室は三段構造になっており、一度の窯焚きで多くの作品を焼くことができます。しかし、置かれた位置によって火の当たり方や温度が微妙に異なるため、仕上がりを完全にコントロールすることはできないそうです。

「最後は、もうお祈りするしかないみたいなところがありますね」

松尾伊知郎さんの奥様は、そう笑いながら話します。
火と向き合いながら生まれる、一点一点異なる表情こそが、魚蓮坊窯の作品ならではの魅力です。

さらに、窯焚き直後の器は、お皿の底面がざらつくこともあるため、最後は丁寧に磨き上げて仕上げていきます。
一枚一枚の器に真摯に向き合う姿勢が、その言葉の端々からも伝わってきました。

奥様の作品コーナーも見逃せない

販売スペースの一角には、奥様が手がける作品のコーナーも設けられています。
ご主人の作品とはまた違った、まるで絵本のようなやさしい世界観の作品が並び、訪れた人の目を楽しませています。

さらに、外に飾られている植木鉢も、奥様の手作り。
「ちまちましたことをやってます」と笑顔で話す姿からは、作品づくりを心から楽しんでいる様子が伝わってきました。

ご主人が生み出す力強く存在感のある造形美と、奥様が描くほのぼのとした世界観。
対照的な二人の作風が同じ空間に自然と溶け込んでいるのも、魚蓮坊窯ならではの魅力です。

「世界中の人と陶芸を通してつながりたい」

「日常的に使うものなのに、デザインはどこか非日常的ですよね」と問いかけると、松尾伊知郎さんは穏やかな表情でこう語ってくれました。

「まず大切にしているのは、使いやすさです。でも、その使いやすい器の中に、“私にしか作れない形”を生み出せないかなと思いながら制作しています」

さらに、「使ってくださる方も含めて、世界中の人と陶芸を通してつながれたらうれしいです。そうやって広がっていけば、本当に幸せですね」とも話します。

器を手にする瞬間、作り手の手と、受け取る人の手が静かにつながる——。
魚蓮坊窯の作品には、そんな温もりが宿っています。

伝説が残る山の中腹で、彫刻の感性と伝統技法が交わり、火と向き合いながら生まれる一点ものの器たち。
「同じものが二つとない」という言葉の意味を、ぜひ実際に手に取って感じてみてください。

店舗情報
  • 店舗名:魚蓮坊窯
  • 住所:佐賀県鳥栖市立石町1520
【2026年5月26日放送 かちかちLIVE  小田井涼平と そいよかね!ツアーズ より】

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