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2025.10.22

「会いたい音がある」アナログレコードの魅力〜Z世代が惹かれる理由〜

デジタル音楽が主流の現代において、なぜ若者たちはアナログレコードに魅了されるのでしょうか。佐賀市嘉瀬町のカフェ「KASE_ANNE」で出会った24歳の店長が語るレコードの奥深い魅力と、佐賀市田代の「久米楽器店」で見つけた「音楽との新しい向き合い方」をレポートします。Z世代にも広がるレコードブームの実態と、その背景にある「チル」な音楽体験について深掘りします。

Z世代に広がるレコードブームの兆し

現代の10代・20代に音楽の聴き方を尋ねると、「音楽アプリ」や「サブスク」といったデジタルサービスが圧倒的多数を占めます。レコードについては「丸いやつですね」「使ったことない」といった声が聞かれる一方で、「なんかおしゃれです」「友達持ってますね」「レトロっていうかなんかちょっと昔の古き良きみたいな感じで」と、アナログレコードへの憧れや関心が高まっている様子がうかがえます。実際に聴く機会は少ないものの、その存在感は確実に若者たちの間で広がりを見せています。

佐賀市嘉瀬町「KASE_ANNE」24歳店長のレコード愛

佐賀市嘉瀬町にあるカフェ「KASE_ANNE」で、アナログレコードをこよなく愛する24歳の店長、由井さんに出会いました。彼女がレコードに惹かれるようになったきっかけは、学生時代に70年代から80年代の洋楽に夢中になったことだと言います。

レコードが持つ五感に訴えかける魅力

由井さんはレコードの魅力をこう語ります。「まず見た目ももちろんなんかテンション上がる。あとは置いて針を落とす瞬間。溝に埃が溜まっていたりとかしたら、同じところ何回も繰り返してわーってなったりするのもまた魅力かなと思ってます」

店内には由井さんの100枚を超えるコレクションが並び、彼女がレコードの奥深い世界に没頭している様子が伝わってきます。レコードは、単に音楽を聴くだけでなく、その見た目、触感、そして針を落とす一連の動作まで含めて、五感で楽しむことができる特別な存在なのです。

佐賀市田代「久米楽器店」数万枚のレコードが眠る聖地

佐賀県庁から車で4分ほどの場所にある佐賀市田代の「久米楽器店」は、レコード、CD、カセットテープの新譜や中古品を取り扱う老舗です。
特に中古レコードの在庫数は数万枚にも上り、店の裏のスペースに積まれた段ボール箱の中も全てレコードで埋め尽くされています。この膨大なコレクションを求めて、多くの音楽ファンがこの店を訪れます。

ブームではなく「定着」したレコード文化

店長によると、来店客の約3割が若い世代だと言います。店長は「このブームっていうのが僕多分ね10年ぐらい前から始まって2、3年で消えちゃうかなと仕事しながら思ってたんですけども、定着でこれブームじゃないです」と語り、一過性のブームではなく、レコード文化が若者たちの間でしっかりと根付いていることを示唆しています。

手軽に始められるレコード体験とプレミア価格の存在

「おしゃれ」「高そう」といったイメージを持たれがちなレコードですが、久米楽器店では100円から購入できるレコードも用意されており、「うち安いのが100円ぐらいからありますから。LP200円とか」と店長は言います。

一方で、竹内まりやの人気アルバムのように、当時1,100円だったものが現在では市場価格1万5,000円から2万円になるなど、プレミア価格がついているものも存在します。

リポーターは人生初のレコードとして山下達郎さんのアルバムを選び、実際に針を落とす体験をしました。

「レコード針っていうのがレコード盤に触れることによって音になるわけなんで、溝にレコード針が降りて音が流れてるわけなんで、ゴミがここに入ったりしたら影響あるし、すごくデリケートなものではあるんですよ」という説明を受けながら、初めての音を体験。

「なんかちょっと暖かみを感じたような気がする」「音楽に没頭する時間とか体験みたいな」という感想が生まれ、デジタルとは異なる音楽との向き合い方を発見しました。

ジャケットアートも魅力の一つ

レコード店は、単に音楽を購入するだけでなく、「出会いの場」でもあります。ジャケットの魅力について、「見た目、ジャケット、おしゃれ。アートじゃん、もう」「1回1回見ると凝ってますよね、デザインとか、写真とか」という声が聞かれます。300円のレコードであっても、そのジャケットデザインの美しさに魅力を感じる人は多く、視覚的な楽しみもレコードの大きな魅力の一つです。

レコード市場の復活とZ世代の「チル」な音楽体験

1950年代に市場規模を拡大したレコードは、1980年には生産額1,800億円に達しました。しかし、1982年のCDプレーヤー登場により、デジタル音楽への移行が進み、レコード市場は急速に縮小しました。

ところが、2015年頃から徐々に回復傾向を見せ、現在は生産額80億円に迫る勢いで右肩上がりの成長を続けています。

「会いたい音がある」デジタルネイティブ世代の新たな価値観

久米楽器店の店長は、サブスクリプションサービスの便利さを認めつつも、「レコード聴く時やっぱ違うんですよ。会いたい音があるんですね」と表現します。この「会いたい音がある」という感覚は、デジタルネイティブ世代にとって、音楽との新たな、よりパーソナルな向き合い方を表しているようです。「なんかこういうレコードかけて、こう、ゆっくりする時間とか、そういうのはチル」という若者らしい表現は、レコードが提供するゆったりとした時間を楽しむ「チル」な音楽体験を象徴しています。

まとめ 心地よい「ひと手間」が紡ぐ、新しい音楽体験

デジタル音楽の利便性を享受しながらも、時にはアナログの温かみや、音楽と真摯に向き合う時間を大切にする。佐賀の若者たちの間で、そんな新しいライフスタイルが広がりを見せています。

KASE_ANNEの由井さんが語る「針を落とす瞬間」の緊張感と高揚感、久米楽器店の店長が表現する「会いたい音がある」という感覚は、レコードが単なる音源媒体ではなく、音楽体験そのものを豊かにする存在であることを示しています。

100円から始められる手軽さや、ジャケットアートとの出会いも、レコードの魅力の一つです。温かみのある音で音楽に浸るもよし、美しいジャケットデザインに惹かれるもよし。心地よい「ひと手間」をかけることで、いつもと違った、より深い音楽の楽しみ方を発見してみてはいかがでしょうか。

【2025年10月16日放送 かちかちLIVE 週刊 アリサーチ! より】

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