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「会いたい音がある」アナログレコードの魅力〜Z世代が惹かれる理由〜
Z世代に広がるレコードブームの兆し
佐賀市嘉瀬町「KASE_ANNE」24歳店長のレコード愛
レコードが持つ五感に訴えかける魅力
由井さんはレコードの魅力をこう語ります。「まず見た目ももちろんなんかテンション上がる。あとは置いて針を落とす瞬間。溝に埃が溜まっていたりとかしたら、同じところ何回も繰り返してわーってなったりするのもまた魅力かなと思ってます」
店内には由井さんの100枚を超えるコレクションが並び、彼女がレコードの奥深い世界に没頭している様子が伝わってきます。レコードは、単に音楽を聴くだけでなく、その見た目、触感、そして針を落とす一連の動作まで含めて、五感で楽しむことができる特別な存在なのです。
佐賀市田代「久米楽器店」数万枚のレコードが眠る聖地
ブームではなく「定着」したレコード文化
手軽に始められるレコード体験とプレミア価格の存在
「おしゃれ」「高そう」といったイメージを持たれがちなレコードですが、久米楽器店では100円から購入できるレコードも用意されており、「うち安いのが100円ぐらいからありますから。LP200円とか」と店長は言います。
一方で、竹内まりやの人気アルバムのように、当時1,100円だったものが現在では市場価格1万5,000円から2万円になるなど、プレミア価格がついているものも存在します。
リポーターは人生初のレコードとして山下達郎さんのアルバムを選び、実際に針を落とす体験をしました。
「レコード針っていうのがレコード盤に触れることによって音になるわけなんで、溝にレコード針が降りて音が流れてるわけなんで、ゴミがここに入ったりしたら影響あるし、すごくデリケートなものではあるんですよ」という説明を受けながら、初めての音を体験。
「なんかちょっと暖かみを感じたような気がする」「音楽に没頭する時間とか体験みたいな」という感想が生まれ、デジタルとは異なる音楽との向き合い方を発見しました。
ジャケットアートも魅力の一つ
レコード市場の復活とZ世代の「チル」な音楽体験
1950年代に市場規模を拡大したレコードは、1980年には生産額1,800億円に達しました。しかし、1982年のCDプレーヤー登場により、デジタル音楽への移行が進み、レコード市場は急速に縮小しました。
ところが、2015年頃から徐々に回復傾向を見せ、現在は生産額80億円に迫る勢いで右肩上がりの成長を続けています。
「会いたい音がある」デジタルネイティブ世代の新たな価値観
まとめ 心地よい「ひと手間」が紡ぐ、新しい音楽体験
デジタル音楽の利便性を享受しながらも、時にはアナログの温かみや、音楽と真摯に向き合う時間を大切にする。佐賀の若者たちの間で、そんな新しいライフスタイルが広がりを見せています。
KASE_ANNEの由井さんが語る「針を落とす瞬間」の緊張感と高揚感、久米楽器店の店長が表現する「会いたい音がある」という感覚は、レコードが単なる音源媒体ではなく、音楽体験そのものを豊かにする存在であることを示しています。
100円から始められる手軽さや、ジャケットアートとの出会いも、レコードの魅力の一つです。温かみのある音で音楽に浸るもよし、美しいジャケットデザインに惹かれるもよし。心地よい「ひと手間」をかけることで、いつもと違った、より深い音楽の楽しみ方を発見してみてはいかがでしょうか。