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「本音は値上げしたい」米価格高騰 飲食店はどう乗り越える? 現場の声を取材
コメ価格の急上昇、飲食店を直撃
農林水産省のデータによると、2024年夏ごろには5kgあたり2,000円台前半だった米の価格が、2025年に入り一気に上昇し、5kgで4,000円を超える水準に。約2倍という急激な価格上昇は、日常的に米を多く使う飲食店に深刻な対応を迫っています。
※農林水産省作成 全国約1000店舗のデータ
寿司屋の現場から 唐津市「たか寿司」
創業40年、親子二代で営む「たか寿司」では、仕入れ先の米屋が廃業するなど、原材料の確保に大きな影響が出ていました。
坂本祐輔さん(2代目)
「地域の米屋さんが"もう米が手に入らない"と廃業されるケースもあります。今までお付き合いのあった米屋さんがなくなると、寿司屋としても本当に困ります」
「以前はコシヒカリを使っていましたが、入手困難になり、今では『夢しずく』や『さがびより』など、その時手に入る佐賀の米を使い分けています。価格は以前の1.5倍ほどになりました」
2024年12月にメニューを5〜10%程度値上げしましたが、それ以降の再値上げには慎重な姿勢を見せています。
「"値段が上がったね"とお客さんに言われることもありますが、『味が落ちるよりは、値上げしてもおいしく食べたい』という声もあります。料理の質を落とせば、お客さんは離れてしまう。それが一番怖い。だからこそ、信頼関係を大事にしたい」
経営努力として、節電や節水など、お客様に負担をかけずに店を維持する工夫も続けているとのことです。
県内の寿司店からも寄せられた声
- 「春に数十年ぶりに値上げ。何十年も価格を変えていなかったメニューも値上げした」
- 「値上げを実施。県産米から安価な東日本産米も併用開始」
- 「値上げせず、お酒や米以外の料理で調整」
- 「農家の在庫が尽き、市販の米をスーパーで探して買い回り。大変な状況」
- 「親族農家からの仕入れで価格上昇の影響は小さめ」
それぞれの店が工夫しながら、なんとか「味」と「価格」のバランスを保とうと奮闘している状況が浮き彫りになりました。
欧風カレー店の現状 多久市「アムール1971」
遠田高広さん
「昨年から段階的に値上がりし、今では約2倍以上。さすがに厳しいです」
「価格を上げるべきか、量を減らして"実質値上げ"するか、すごく悩みました。でも現在はなるべく今までと同じ量でお出ししています。どのお店も本音では値上げしたい。でも、お客さんのことを考えると簡単には決断できないんです」
「国が備蓄米の放出や輸入米の調整をしていると聞きます。少しでも値段が下がるのはありがたいですが、当店では引き続き佐賀県産米にこだわっていきたいと思っています」
使用している米は佐賀県産にこだわり、品質は維持し続けているとのことです。
他のカレー店の声も
- 「今年春にメニューを平均100円程度値上げ。値上げの張り紙を出しているが、会計時に"上がったね"と言われることも」
- 「国産米からアメリカ産米に変更。値上げはせず。お客さんにどう映るかは心配だが、味には合っている」
- 「6月に10〜15%の値上げ。米は県産銘柄を使用し続けている。戦争の影響もあり継続的な価格対応中」
深刻化するお米の高騰、店の存続を左右する事態に
2024年度、全国でカレー店の倒産件数が過去最多となったという調査結果も発表されました(※帝国データバンク調査、負債1,000万円以上の法的整理が対象)。テイクアウト需要の減少や原材料高騰の中でも、特に米の値上がりが重くのしかかっています。
個人経営の飲食店では、メニュー価格の見直しや素材の変更、営業努力など、さまざまな工夫で乗り切ろうとしていますが、厳しい現実は変わりません。米という主食の価格が上がることは、料理そのものの価値に直結し、すしやカレーといった「米ありき」の料理は、その影響をモロに受けているのです。