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佐賀県の剣道競技人口が6年間で34%減少 「剣道王国」の課題と現場の声
佐賀県内のスポーツ競技人口の現状
2024年度の佐賀県内の高校生以下の競技人口を見ると、上位はサッカー、バレーボール、バスケットボール、野球、陸上と続き、これらのメジャースポーツが主流を占めています。
2018年度と比較した増減率では、人口減少社会の影響もあり、多くのスポーツで競技人口が減少している傾向が見られます。特に減少率が大きいのはテニス(44%減)、相撲(42%減)、そして剣道(34%減)となっており、伝統的なスポーツほど厳しい状況に置かれていることがわかります。
みやき町中原中学校女子剣道部の現実
この競技人口減少の現実を物語るのが、みやき町にある中原中学校の女子剣道部です。武道場で取材に応じた部員は現在わずか4人。夏に3年生が引退し、2年生のみでの活動を続けています。
「今4人の生徒さんが一生懸命頑張っていますが、ペアで練習をするというところで、1人でも練習お休みとかしたら、人数が合わなくて大変だろうなと」と、リポーターは練習現場の厳しさを伝えています。
合同チームの解散と大会参加の困難
みやき町では、女子剣道部員の減少から町内の3つの中学校で合同チームを組み、「みやき中学校」という実在しない学校名で大会に参加していました。しかし今年の夏、中原中以外の2校で部員がゼロになり、合同チームも組めない状況となりました。
「中体連の大会は5人の参加規定がありますので、5人揃うようであれば5人で参加をしています。現在4人での参加になります」と浜本先生。5人の団体戦に4人で出場する場合は、1つ不戦敗扱いになることが多いそうです。
一方で、競技環境の変化も起きています。「連盟の大会等では、やはり女子部員の減少が進んでいますので、3人制での試合が多くなっております。なので、3人制での参加をしているところです」と、ルール自体も現実に合わせて変化していることがわかります。
少数精鋭での活動と部員の想い
人数が少ない分、一人一人が非常に密度の濃い練習を行っています。
主将の吉戒円佳さんは「部員が少ない中でやる稽古はとてもきついし、偶数なのでとてもきつくて、大会も出ることが少ないですが、4人で、すごく頑張れているのでいいと思います」と前向きな姿勢を見せています。
剣道を始めたきっかけと魅力
部員たちに剣道を始めたきっかけを聞くと、多くが先輩への憧れを挙げています。
「きっかけは、私の憧れの先輩が部活オリエンテーションの時にすごくかっこいい姿を見て、私もこうなりたいなと思って、私は剣道部に入りました」(吉戒主将)
「先輩方の凛とした剣道に憧れて剣道部に入りました」
「剣道を始める前は内気な性格だったんですけど、そんな性格を変えたくて剣道部に入部しました」
「先輩たちの剣道をちょっとだけ見てみたらとてもかっこよくて、私もこんな風になれたらいいなと思って、入りました」
剣道の魅力について、部員たちは次のように語ります。
「一番は、礼儀作法を学べるところです。学校生活で活かせる場面があります」
「きつくて嫌だなって思う時も時々あるけど、チームで勝てたりすると、ああ、良かったなって思えるところが楽しいです」
「私自身がちょっと人よりも声が大きい人なので、それを活かせる場面で私はすごく面白いなって思いました」
剣道への誤解と実際のコスト
剣道に対する一般的な誤解についても取材では触れられています。「打たれると痛い・練習がきつい」というイメージがあるかもしれませんが、しっかり防具をつけて体を守る競技で、不慮の激しい身体的接触は少ないため、大ケガのリスクはさほど高くないと考えられます。
また、「防具を揃えるのに費用がかかるのでは」という懸念について、顧問の先生によると、防具は昔より安価に手に入るようになっていて耐久性も高いため、3年間でのコストとしては他のスポーツに比べてそこまで高くないのでは?ということです。
競技人口減少の背景と課題
県内の関係者によると、剣道は親や兄弟など身近な人がすでにやっている縁から始める人が比較的多いといいます。しかし、プロがなくオリンピック種目にもないため、大きなメディアでの露出があまり多くない剣道は、興味を持つきっかけになる要素が社会的に少ないのが一つの課題だと言えそうです。
現場で聞かれた声の一つに、「技が決まったかどうかが素人目からだと分かりにくいため、競技に入りづらいのではないか」という指摘もありました。ただし、ルールの一部が分かりにくいというのは他のスポーツでもあることで、捉え方次第という面もあります。
もともと佐賀県は「剣道王国」とも呼ばれるほど、剣道の文化が浸透した地域です。去年の国体でも、佐賀県は成年女子と少年男子で全国優勝を果たしています。中でもみやき町は、県立三養基高校が全国的な剣道の強豪校として知られる町でした。
しかし、その強豪校のお膝元でも部員確保に苦労している現実があります。主将の吉戒さんは「とても礼儀正しくもなるし、厳しそうには見えると思いますが実は楽しいスポーツなので皆さんよかったら入ってください!」と呼びかけています。