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行方不明の狛犬が255年の時を経て"帰還" 唐津市「黒崎神社」地域と全国をつないだ救出プロジェクトの全貌
常駐神職のいない唐津湾を見下ろす小さな神社
唐津市にある黒崎神社は唐津湾を望む小高い山の中腹に位置する神社です。境内へ続く石段は見上げるほど急峻でリポーターも「大変な場所ですね」と思わず声を上げるほど。普段から神職が常駐しない小さな社ですが、地域の守り神として昔から地元の人々に親しまれてきました。
もともとは山のさらに上に鎮座していましたが、明治時代に現在の場所へ移転。そのとき、狛犬は山の中に置き去りにされ、旧神社のあった場所も含め、以来誰も正確な場所を知らなくなっていったといいます。
「言い伝え」だけが残っていた250年以上前の狛犬
黒崎神社には「山の上の遺跡に200年以上前の狛犬がある」という言い伝えが代々伝わっていました。しかし実際に実物を見たという人は誰もおらず、その存在は長らく"謎"のままでした。
転機が訪れたのは数年前のこと。神職がたまたま山に登った際に偶然にも遺跡を発見。そこで狛犬1体が姿を現したのです。しかし険しい山の中ということもあり、神社関係者だけでは手に負えない状況が続いていました。
インスタグラムの一枚の写真がすべての始まりだった
そこに名乗り出たのが、地元出身の行政書士・浜本さんです。神社とは直接の関係はなく「ただの地元出身者」と語る浜本さんでしたが、神職がインスタグラムに投稿した狛犬の写真を目にした瞬間「これは助けないといけない」と直感したといいます。
行政書士という手続きのプロとしての強みを活かし、浜本さんは即座に狛犬救済のための社団法人を設立。クラウドファンディングで広く支援を募る体制を整えました。
崖の下に"もう1体"が——命がけの捜索と発見
クラウドファンディングに全国から温かい支援が殺到
クラウドファンディングを開始すると全国から温かい応援メッセージと支援が次々と届きました。「写真を見て涙が出た」「どうか助けてください」「子どもたちを守ってくれるように」——最終的には目標金額のおよそ2倍近くが集まったといいます。
浜本さんが特に心に残っていると語るのが、宮城県石巻市の復興住宅に暮らす被災者の方からの寄付です。「縁もゆかりもないのに被災地から支援してくださる」と浜本さん。自身の苦しい境遇を越えて見知らぬ土地の狛犬に想いを寄せてくれた人がいた——そのことがプロジェクト全体に大きな温もりをもたらしました。
20人が集まった半ば命がけの救出作業
人材の輪も広がり、先月15日についに救出作業が決行されました。「狛犬を救おうじゃないか!」とおよそ20人が集結し、修験道の山として知られる険しい崖を相手に、半ば命がけの作業が行われました。
狛犬1体の重さは100キロを超えるとみられており、6〜8人がかりでようやく持ち上げられるほどです。それでも参加者全員が丁寧に扱いながら運び出しました。
台座への設置を担当した石材店の方はこう語ります。「佐賀でよく名前を聞く『肥前狛犬』という種類の狛犬です。文化財的にも価値の高いものだと思います」。肥前狛犬は一般的な狛犬とは異なり独特の優しい表情が特徴。この狛犬はおよそ255年前に作られたものとみられています。
255年ぶりの帰還
255年ぶりに山から運び出された2体の狛犬は、今月8日に台座へ設置され正式にお披露目されました。神社の境内に並ぶ姿は、まるで昔からそこにいたかのような自然な佇まい。所々に傷はあるものの、その穏やかな表情は変わらず今も唐津の地域を静かに見守り続けています。
リポーターはプロジェクト全体についてこう振り返りました。「狛犬に集まった願いや思い、優しさの大きさをものすごく感じるプロジェクトでした」。
浜本さんも語ります。「狛犬自体はもちろん大切ですが、それより全国から温かい応援が届いたという大切にする気持ち——そういうものを子どもたちにもちゃんと伝えていくのが今後大切にしていきたいことです」。
まとめ
店舗情報
- 施設名 : 黒崎神社
- 住所 : 〒847-0124 佐賀県唐津市浦5138−6

