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2026.05.12

子どもの成長に寄り添う読み聞かせ——神埼市「おはなし宝箱」が文部科学大臣表彰を受賞

「今日はどんなお話かな——」
子どもたちが目を輝かせながら耳を傾ける時間を、25年間届け続けてきた団体が、全国的な表彰を受けました。

佐賀県神埼市で読み聞かせ活動を続ける「おはなし宝箱」。

活動の特徴は、物語の世界に入り込めるよう工夫された手作りの小道具や演出。そして、読み聞かせのあとに無理に感想を求めないことです。
「自分のために読んでもらえた」——そんな温かな体験そのものを大切にしているといいます。

派手さはなくても、一冊一冊、ひとりひとりに寄り添ってきた25年。
“読む喜び”を届け続けてきたその活動が、今あらためて注目を集めています。

佐賀の団体が全国で表彰

4月23日の「子ども読書の日」にあわせ、東京都内では文部科学省などが主催する「子どもの読書活動推進フォーラム」が開かれました。

このフォーラムでは、子どもたちの読書習慣づくりに貢献した団体などを表彰。佐賀県からも、読み聞かせや読書推進に取り組む複数の団体が「子どもの読書活動優秀実践団体」に選ばれました。

地域に根ざした地道な活動が高く評価された今回の表彰。県内には、学校や図書館、地域団体などを中心に、子どもたちへ本の魅力を伝える取り組みが数多く広がっています。

“本に親しむ時間”を大切にしたい——。
そんな思いで続けられてきた活動の積み重ねが、子どもたちの未来につながっています。

光明寺を拠点に25年

今回取材したのは、受賞団体のひとつ、神埼市の「おはなし宝箱」です。

活動の拠点となっているのは、神埼町尾崎にある光明寺。木のぬくもりを感じる堂内では、この日もメンバーたちが集まり、次の読み聞かせに向けた準備を進めていました。

団体を率いるのは、代表の喜多敬子さん。夫で住職の秀哉さんとともに、25年にわたって活動を続けてきました。

取り組みは、学校での読み聞かせだけにとどまりません。小学校の全クラスを回って本を読むほか、地域への出張読み聞かせ、学校行事のステージ発表など、さまざまな形で子どもたちに“本の楽しさ”を届けてきました。

今回の受賞について、喜多代表は静かに喜びを語ります。

「小学校で全クラスに入ってお話をして、いろいろ出張もしてあちこち行ったり、小学校の行事のときにステージの上でいろんなことをしたりしているので、その地道な活動が認めていただけたのかなあと思います」

派手さはなくても、目の前の子どもたちに丁寧に向き合い続けてきた25年。その積み重ねが、今回の受賞につながりました。

こだわりの手作り小道具

「おはなし宝箱」の読み聞かせが特別なのは、ただ本を“読む”だけではないところにあります。

取材の日、メンバーたちは絵本に登場する「新芽」を一つひとつ手作りしていました。色合いや形を確かめながら丁寧に仕上げていく姿からは、物語の世界を少しでも豊かに届けたいという思いが伝わってきます。

喜多代表は「美術監督が結構厳しいので」と笑顔を見せますが、その言葉通り、細部までこだわり抜かれた完成度の高さが印象的でした。

ページをめくる音だけでなく、目の前に広がる小さな演出の数々——。
「おはなし宝箱」は、子どもたちを“本の世界に入り込める時間”へと誘っています。

感想は聞かない

読み聞かせが終わったあと、「おはなし宝箱」では子どもたちに感想を求めない——。それも、長年大切にしてきたこだわりのひとつです。

喜多代表は、その理由についてこう語ります。

「まだ語彙力がそんなに発達していない中で、何か言わないといけないとなると、ゆっくり楽しんだり、『なんで?』と思ったりができないと思うので、安心して聞いてほしいという思いから、感想は聞かないようにしています」

「どう思った?」と答えを求めるのではなく、子どもたちそれぞれの心の中に、物語の余韻をそっと残しておく——。
その時間を大切にしているのです。

読み聞かせは、“上手に感想を言う場”ではなく、“自分のために物語を楽しむ時間”。
25年間の活動の中で育まれてきたその姿勢には、子どもたち一人ひとりの感じ方を尊重したいという思いが込められていました。

子どもたちの手紙が、25年を支える力

25年間の活動の中で、喜多代表にとって何よりうれしかったのは、子どもたちの変化でした。

「うれしかったのは、子どもたちが私たちが読んだ本を図書室に行って探してくれて、『読んだよ』と教えてくれること。その年の一番最後の読み聞かせのあとに、子どもたちが手紙を書いてくれるんですよね。それを読むと、本の楽しさや素晴らしさを少しでも推進できているのかなって感じます」

読み聞かせの時間が終わったあと、自分から図書室へ向かい、本を手に取る子どもたち。
その小さな行動の積み重ねに、「おはなし宝箱」が届けてきた時間の意味が表れています。

誰かに読んでもらった記憶は、子どもたちの心の中に静かに残り続けます。
その一冊との出会いを、25年間変わらず届けてきたことこそ、「おはなし宝箱」の大きな力なのかもしれません。

読んでもらうからこそ届く「温かさ」

読み聞かせの魅力とは何か——。
喜多代表は、その本質をやさしい言葉で語ります。

「自分のために読んでもらうという温かさが伝わるので、ぜひやっぱり自分で読むのも大事だけど、読んでもらうことで、自分ではあえて選ばない本とも出会える。そういうのをあったかい声で読んでもらうところが、読み聞かせのいいところかなあと思います」

自分で本を読む時間も大切。けれど、誰かが自分のために声に出して読んでくれる時間には、また違った特別さがあります。

ページをめくる間、物語に耳を傾ける静かな時間。
その中で、子どもたちは自分では選ばなかったかもしれない一冊と出会い、新しい世界に触れていきます。

“読む”だけではなく、“読んでもらう”。
そこに宿る温かさこそが、「おはなし宝箱」が25年間届け続けてきた、読み聞かせの魅力なのかもしれません。

子どもたちに、本との出会いをもっと

地道に、丁寧に、そして温かく——。
「おはなし宝箱」が25年間積み重ねてきた読み聞かせ活動は、子どもたちに“本の楽しさ”を届け続けています。

一冊の本と、一人の読み手。
そして、その物語に耳を傾ける一人の子ども。

小さな出会いの積み重ねが、子どもたちの想像力や感受性を少しずつ育てていきます。

読み聞かせの時間が終わっても、心に残り続ける物語。
「おはなし宝箱」が届けているのは、本そのものだけではなく、“誰かに読んでもらった記憶”なのかもしれません。

喜多代表は最後に、穏やかな表情でこう語りました。

「ぜひ子どもたちにも、本にたくさん触れてほしいなと思います。」

温かな声で紡がれる物語は、これからも子どもたちの心の中で、静かにページをめくり続けます。

【2026年5月5日放送 かちかちLIVE サガSagace より】

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