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梨の木をV字に?「佐賀県果樹試験場」が挑む新栽培法・18年後の新品種とは
革新的な「V字ジョイント栽培」で梨栽培を効率化
佐賀県果樹試験場で最も注目を集めているのが、「V字ジョイント樹形」という新しい梨の栽培方法です。従来の梨栽培では、枝が屋根に沿うように水平に張られていましたが、V字ジョイント栽培では梨の木がV字の形に仕立てられています。
「枝を立てて固定しているので正面を向いて手入れ・収穫ができる」
試験場の担当者はこう説明します。この栽培方法により、作業者は梨を取りやすい高さで収穫作業を行えるようになり、「高齢の方以外にも、面積を拡大したいと考えられている生産者にとっても作業がしやすくて規模拡大もしやすい」という利点があります。
V字ジョイントに合わない品種も?栽培試験で最適な組み合わせを検証
佐賀県では主に、幸水、豊水、あきづき、新高、王秋の5品種の梨が栽培されていますが、果樹試験場ではさらに数を増やして11品種での栽培試験を実施しています。
「V字ジョイントという新しい樹形に対する向き、不向きを調査している」
品種によってこの栽培方法への適性が異なることが分かってきており、リポーターが「V字ジョイントに合う、合わないがあるんですか?」と質問すると、担当者は「はい」と明確に回答。今後、V字ジョイント栽培に最適な新しい品種が発見される可能性も十分にあるといいます。
高所作業の課題を解決する革新的な作業台
V字ジョイント栽培には大きな利点がある一方で、枝を立てて仕立てるため、「高いところでの作業が発生する」という課題もあります。
そこで佐賀県果樹試験場では、この課題を解決するために「レール上を走る作業台」を試験的に導入し、作業の効率アップを目指しています。この取り組みにより、高所での作業がより安全で効率的になることが期待されており、V字ジョイント栽培の普及をさらに後押しすることになりそうです。
温暖化に対応した新品種開発への長期戦略
現地で味わった梨について、リポーターは「ジュース。水分を噛んでる感じ。甘さと香りも後から来て、美味しい」とコメント。
しかし、こうした美味しい梨も、他の農作物と同じく、温暖化によって従来の品種を育てにくくなってきているという現実に直面しています。そこで佐賀県では、気候変動に対応した新しい品種の開発も積極的に行っています。
試験場では、「6000粒の種から1品種だけ選ぶ」という厳選された品種改良が進められています。
担当者によると、「育種始めてから大体20年ぐらい」かかるということで、現在2年目の研究では「あと18年後」に新しい品種が誕生する予定です。リポーターは「本当に魅力的な新しい梨が今から18年後に誕生するかもしれない」と期待を込めてコメントしました。
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佐賀県ナシ産業の現状と未来への期待
佐賀県は「ナシの施設栽培面積が日本一」である一方で、「それを支える佐賀県のナシ農家は、60歳以上の方が多い」という現状があります。V字ジョイント栽培をはじめとする新しい栽培技術の導入が、この課題解決の助けになることが期待されています。
V字ジョイント栽培は「県内のナシ農家でも、少しずつ導入する人が増えてきている」状況で、「木と木の間のスペースもあるから、そこにまた機械を入れられて、機械を入れるとまた作業効率も良くなる」という複合的な効果も期待されています。
持続可能な未来への投資
佐賀県果樹試験場の取り組みは、単なる技術開発にとどまらず、佐賀県のフルーツ産業全体の持続可能な発展を見据えた長期的な投資といえます。
「体に辛かったら続かない」という現実を踏まえ、より効率的で持続可能な栽培方法の研究開発は、佐賀県のフルーツ産業の未来を明るいものにする重要な取り組みです。
V字ジョイント栽培の普及から新品種の開発まで、多角的なアプローチで佐賀県のフルーツ界を支える同試験場の役割は、ますます重要になっていくでしょう。18年後の新品種誕生への期待とともに、佐賀県果樹試験場の挑戦は続いています。