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佐賀が生んだ禅僧・売茶翁と天才絵師・若冲の魅力に迫る特別展開催中
江戸時代の自由な僧侶と奇想の絵師が織りなす、共感の物語。佐賀県立美術館で350年の時を越えた出会いをご覧ください。
佐賀県立美術館では現在、売茶翁生誕350年を記念した特別展「売茶翁と若冲」が開催されています。佐賀が生んだ僧侶・売茶翁と天才芸術家・伊藤若冲の交流をもとに、売茶翁の魅力を分かりやすく紹介する展覧会として注目を集めています。
芸術の秋にふさわしく、朝晩の気温が冷える季節にぴったりの温かいお茶が美味しい時期に開催されているこの展覧会では、約130点の作品が来場者を魅了しています。
身分を問わず煎茶を広めた革新的な僧侶・売茶翁
「売茶翁は佐賀生まれのお坊さんで、江戸時代350年前に活躍した禅僧です」学芸員が説明するように、売茶翁は当時としては革新的な僧侶でした。
当時のお茶文化は抹茶が主流で、限られた人々だけが楽しむものでした。しかし売茶翁は、身分に関係なく色々な人にお煎茶を振る舞っていました。愛用の茶道具類も展示されており、売茶翁の自由な茶文化の様子を垣間見ることができます。
売茶翁は京都の景勝地などで道端で煎茶を振る舞っており、特筆すべきは「お茶代を実は決めていなくて、ただでもかまわない」という点です。お金や権威といったものに全く執着しない、そういった自由な生き方に人々は強く引きつけられていました。
「奇想の画家」伊藤若冲との運命的な出会い
その中に、伊藤若冲という画家もいました。若冲は同時代に活躍した画家で、綿密な観察に基づいて写実的な絵画を描いており、近年では「奇想の画家」と呼ばれています。
展示されている「雪梅雄鶏図」は、雪の中に雄の鶏を描いた作品で、「羽の描写は、実際に鶏を観察しながら、描いた初期と思わせる名品。息を飲むような美しさが感じられる傑作です。
また「白象図」では、真っ黒な背景に巨大な象を描いており、「実はこちらは拓版画を元に、着想を得て若冲が描いた新しい発想力(題材)を元に描いたものとなっています」。こちらも動き出しそうなくらいの迫力を持った作品です。
深い憧れと尊敬が生んだ5点の肖像画
若冲が売茶翁をどれほど慕っていたかが分かるものとして、売茶翁の肖像画5点が展示されています。
「若冲は動物とか植物とかそういったものを得意としていた画家です。しかし、こういった肖像画を売茶翁だけで、こんなにもたくさん描いていたというのは、売茶翁に対する強い憧れというのが表されているのではないかと考えられます」
一説によると「売茶翁なしでは若冲の自由な発想力は生まれなかったんじゃないか」とおっしゃる方もいるほど、その影響は深かったのです。
神に通じる絵画表現への最高の賛辞
売茶翁も若冲に対して一目置いており、大絶賛した書を今回展示しています。その内容は「丹青活手妙神通」というもので、「若冲の絵画表現というのは神に通じているという意味です」。
神という言葉を使うほど素晴らしい作品を描く若冲の最高傑作として、10年間をかけて描いた「動植綵絵」が展示されています。「若冲が10年間をかけて描いた作品です」。
たくさんの花鳥図を描いているこの作品の中には、南国の鳥類なども描かれており、その精緻な描写力には圧倒されます。
2人の友情が生んだ夢のコラボレーション
「2人の合作の作品も今回展示しています」として、伊藤若冲と売茶翁による「髑髏図」の作品が紹介されています。
「上部に売茶翁の漢詩と、髑髏の下絵の髑髏図を描いています。これは版画の作品となっていて、現存作品3点のうち2点を展示しています」
まさに夢のコラボレーションといえるでしょう。
今回の展示の特色として、一部を除いて写真撮影ができるという点があります。来場者は好きな絵を選んで携帯に収め、SNSにも投稿することができます。「皆さんお気に入りの作品を撮る方もいらっしゃるかもしれません」というほど、魅力的な作品が揃っています。
サガテレビでのコラボメニューも登場
この特別展を記念して、サガテレビ1階のJONAI SQUARE CAFEでは「売茶翁のうれしのほうじ茶×若冲パフェセット」というコラボメニューも提供されています。
バニラアイスとごまアイス、あんこも入った特別なパフェと温かいほうじ茶のセットで、「なんかほっとしますね。こういうのってコーヒー合わせがちなんですけど、お茶も合います」という感想も聞かれました。
- 商品名:売茶翁のうれしのほうじ茶×若冲パフェセット
- 値段:1,200円
まとめ
学芸員は「今回の展覧会というのが、まず売茶翁を知っていただきたいというところがございます。その中で、売茶翁と天才絵師・若冲のその影響、関係性について是非この展覧会を通してご覧いただければと思います。およそ130点が皆さんを魅了すること間違いなし」と来場を呼びかけています。
佐賀が誇る偉人・売茶翁と天才・若冲の交流に触れることができる貴重な機会として、芸術の秋にふさわしい特別展となっています。身分や権威に囚われない自由な生き方を貫いた売茶翁と、神に通じると評された若冲の芸術。この2人の友情が生んだ奇跡の作品群を、ぜひ会場でご覧ください。
特別展「売茶翁と若冲」
- 会場: 佐賀県立美術館(佐賀市城内)
- 期間: 11月24日(月)まで
- 開館時間: 9時30分~18時
- 観覧料: 一般1,500円(高校生以下無料)
- 休館日: 毎週月曜日(祝日の場合は翌日)

