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2025.10.26

恐怖を直視して命を守る「スケアード・ストレート」交通安全教室が佐賀県内小中学校で開催

子どもたちの目の前で車と自転車が激突する音が響く。その迫力に思わず息を呑む子どもたち。これは佐賀県内の小中学校で行われた特別な交通安全教室の一場面です。「スケアード・ストレート」と呼ばれるこの教育手法は、恐怖を実感することで危険行為を未然に防ぐことを目的としています。

スケアード・ストレートとは

「スケアード・ストレート(Scared Straight)」は日本語で「恐怖を直視する」という意味で、恐さを実感することでそれにつながる危険行為を未然に防止するための教育手法です。具体的には、スタントマンによる交通安全教室のことを指してよく使われます。

今月、小城市芦刈町にある小中一貫校で実際に行われたスケアード・ストレートの模様を取材しました。

迫力満点の事故再現に子どもたちも息を呑む

この日参加したのは、小学4年生から6年生の児童と中学部3学年の生徒です。子どもたちにストレスを与える可能性も考慮し、事前に各家庭に参加意思の確認も行われましたが、各学年ほとんどの子どもが参加しました。

教室が始まると、司会者が「この人形が乗った自転車に車がぶつかります。実際にぶつかります」と説明。その直後、大きな衝突音とともに自転車が大破する様子が目の前で繰り広げられます。

「自転車があんな風に壊れてしまって、びっくりしました。見てみて怖かったです」と小学6年生の児童は感想を語りました。リポーターも「かなりの音がしましたね。ちょっと、子どもたちもどよめいています」と現場の緊張感を伝えています。

恐怖だけでない、命を守るための工夫

しかし、この教室はドキドキ・ハラハラだけではありません。命を守るために、を伝える工夫がそこにはありました。

自転車の手放し運転の危険性を伝える場面では、スタントマンが「スタントマンはバランスがいいからね、これくらいのこと簡単にでき、あ、痛。手放し、危ないね」と実演しながら転倒。その後、事故が起きた際の対処法についても説明されます。

「事故が起こりましたよ!さあどこに連絡しますか?何番?」との問いかけに、子どもたちは「119番!」「110番!」と元気よく答えます。救急車への通報は119番、警察への通報は110番という基本的な知識も確認されました。

最も危険な内輪差による巻き込み事故

子どもにとって最も怖い事故の一つが、車の内輪差による巻き込みです。実演では、トラックがコーナーを曲がる様子を再現。「見た?前輪のタイヤはちゃんとコーナー曲がりました。子どもたちは内輪差の恐ろしさを目の当たりにします。

リポーターは「実際に『怖い』というようなシーンも見せるんですけど、子どもと、どうやったら安全になるのか、どうやったら危なくないのかというのも一緒に考えながら行われていますね」と教室の特徴を説明しています。

被害者にも加害者にもなり得る自転車

自転車通学が多い佐賀県内の中学生にとって、自転車は被害者になることもあれば加害者にもなり得るという重要なメッセージも伝えられました。

中学1年生の生徒は「初めてスケアード・ストレートというのを見て、目の前で怖いことが起きて、あれが自分だったら本当に怖いなと思いました。自分も自転車で通学するので、自転車が関連した事故は全部印象に残りました」と真剣な表情で語りました。

また、中学3年生の生徒は「私も事故を間近で見ることはあまりなかったのですが、きょう事故を再現してもらって、とても危険なものだと感じました。死角で車が見えない時もあると思うので、しっかり止まって確認してから自転車に乗りたいと思います」と今後の決意を述べています。

コミカルな演出で緊張を和らげる配慮

怖いシーンの後は非常にコミカルに見せて、子どもたちと目線を同じにしながら状況説明や「こうしたら危ないよね」ということも交えています。子どもたちには考える時間を与えつつも、しっかりと伝わるような工夫が随所に見られました。

小学4年生の児童は「最後の自転車と車の事故が怖かったです」と感想を述べ、スタントマンが「大丈夫でーす!」と元気よく起き上がると、司会者も「大丈夫だって。早く起きないとみんな心配するじゃん」と笑いを誘い、緊張した雰囲気を和らげていました。

スタントマンの熱い思い「1人でも多くの人に」

教室を実施したのは、カースタントマンたちの活動を事業としている長崎県の企業です。"子どもの命を守りたい"その思いの源には深い体験がありました。

スタントマン会社の代表は「我々も元々は映画やテレビの撮影からの、交通安全教室やっているんですけど、これが社会貢献になるなと今日は特に感じました」と語ります。

さらに「私もこういう活動15年20年近くやっているんですけど、お子さんを亡くされた親御さんとお話したことがあって、これを亡くなったお子さんに見せたかったなという話も伺ったことがあって、僕らがやっているのは間違いじゃないなということは思いました。一人でも多くの人に見てもらえたらと僕は思っていますので」と、活動への思いを熱く語りました。

10月が最も多い小学生の歩行中事故

警察庁が今年の秋の交通安全運動にあわせて発表した近5年の交通事故のデータによると、歩行中の小学生の交通事故は10月が最も多くなっています。新学期にも慣れてきて、過ごしやすい季節になり、活動的になることなどが理由として考えられています。

さらに、これからの季節は子どもだけの話ではありません。子どもに限らないすべての年代の歩行中の交通事故も、これからだんだん日が短くなっていく11月、12月にかけてどんどん増加していくというデータが示されています。

スケアード・ストレートでは自転車に関する内容が多く取り上げられましたが、自転車の事故もやはり10月から12月が多くなるという調査もあります。

まとめ

映画やドラマの撮影用に日頃から特殊な訓練を積んでいるスタントマンたちだからこそ実現できるリアルな交通安全教室。子どもたちの心に深く刻まれた「怖さ」は、きっと彼らの安全意識向上につながることでしょう。

大きな衝突音とともに大破する自転車、内輪差による巻き込みの恐ろしさ、手放し運転の危険性。目の前で繰り広げられる事故の再現は、子どもたちに強烈な印象を残しました。同時に、119番・110番の通報方法や、どうすれば安全になるのかを一緒に考える時間も設けられ、恐怖だけでなく具体的な対処法も学べる工夫が凝らされていました。

「亡くなったお子さんに見せたかった」という親御さんの言葉を胸に、15年以上活動を続けるスタントマンたち。「一人でも多くの人に見てもらえたら」という熱い思いが、子どもたちの命を守る教育を支えています。

これから日が暮れるのが早くなっていく季節。警察庁のデータが示すように、10月から12月にかけて交通事故は増加します。私たち大人も含めて交通事故には十分気を付けたいものです。

【2025年11月21日放送 かちかちLIVE サガSagace より】

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