ピックアップ
pickup
新たなキーワード「GX」で進む佐賀県内企業の環境への取り組み
50年の建物を断熱改装で省エネ化 - 農業資材会社「ミズマチ」
佐賀市兵庫町にある農業・工業資材を扱う卸売会社「ミズマチ」では、50年の歴史を持つ倉庫でユニークなGXの取り組みが行われています。一見すると普通の店舗に見えますが、倉庫の秘密は2階にありました。
建築から50年が経つこの建物の2階は、夏場には40℃近くまで気温が上がる過酷な環境でした。「スポットクーラーやエアコンをつけても焼け石に水の状態だった」と担当者は振り返ります。
そこで同社が取り入れたのが断熱パネルを使った「箱」の設置です。この断熱パネルは表面をポリエステル系合成樹脂で覆い、中には厚さ40mmの発泡ウレタンフォームが入っており、優れた断熱性と保温性を実現しています。
この断熱改装により、エアコンの電気使用量が大幅に削減され、結果として同社は年間126tのCO2排出量のうち5%の削減に成功しました。「自然との関わりが深い専門用具を扱う会社だからこそ、環境を守るGXにも積極的」と担当者は語ります。
「環境をみなさんが守りながらビジネス成長につなげていくということを僕たちは望んでいます。そういうのも含めてGXということですね」
自己治癒するコンクリートで建築業界に革新 - 「馬渡商会」
武雄市にある馬渡商会は、コンクリート製品の製造・販売を行う会社です。1日に20〜30tの生産を行う同社では、より革新的なGXの取り組みが進んでいます。
そこで馬渡商会が注目したのが「自己治癒コンクリート」です。このコンクリートには、酸素と水に反応して石灰化する微生物が混入されています。
コンクリートにひび割れが発生すると、その隙間に酸素と水が入り込み、微生物が反応してその穴を自動的に埋めてくれるという画期的な仕組みです。
水害経験がGX推進のきっかけに
馬渡商会がGXに本格的に取り組むようになったきっかけには、地元ならではの切実な事情がありました。この地域は令和元年と令和3年に連続して水害に見舞われ、同社の工場も腰の高さまで浸水し、復旧に約1ヶ月を要しました。
「気候変動のリスクをその時にものすごく感じたもので、そのリスク低減に取り組まないとこれは、この先やっていけないんじゃないかという思いがあって、取り組みを強化しました」と担当者は語ります。
県の支援制度も充実
佐賀県では現在、GXの推進に役立つ事業者向けの補助金の受付を行っています。太陽光発電設備やエアコンなどの省エネ設備の導入が対象となっており、詳しくは「SAGAゼロカーボン加速化事業」で検索することができます。
GXは今年2月に政府が策定した「第7次エネルギー基本計画」に多く記載された、環境界の注目キーワードです。国の施策だけでなく、私たちの身近なところでも着実に広まっており、覚えておいて損はない重要な概念といえるでしょう。
環境への配慮と経済活動の両立を目指すGX。佐賀県内では、断熱改装で年間5%のCO2削減に成功した「ミズマチ」、自己修復コンクリートで製品寿命を2倍に延ばし30%のCO2削減を実現する「馬渡商会」など、先進的な取り組みが広がっています。

