多久市に今年1月、個人経営の書店兼カフェ「BOOK&CAFE サランバン」が誕生しました。約10年ぶりに多久市に復活した本屋として地域から注目を集めるこの場所は、年間100冊もの本を読む読書愛好家の店主が、本を通じた地域交流の拠点づくりを目指して開いた温かい空間です。

お店があるのは多久市の商店街の一角。元々は肉屋だった空きスペースを、多久市出身の店主・西村ゆかりさんが書店兼カフェに生まれ変わらせました。

「ここ元々ここの時代に栄えてたマーケットになっていました。駄菓子屋さんとか昔はたくさんあったんですけど、多久も人口も減って、シャッターがたくさん降りてくるようになったので、ちょっとここで何かやってみたいなって思いました」

西村さんのこの言葉に、故郷の賑わいを取り戻したいという強い想いが込められています。店内には約300冊の本が並び、文芸書、エッセイ、絵本を中心に、子どもから大人まで楽しめるラインナップが揃っています。

西村さんは現役の学校図書館司書でもあります。プロの視点で選び抜かれた本が並ぶ店内は、まさに「本との出会い」の場です。

「本の選書とかもそうなんですけど、本の楽しいところを伝えたりとか、本とか子供たちだったりとに繋げる仕事になると思います」

西村さんは、多久市で約10年前に大型書店が閉店して以降、棚から本を手に取り購入できる書店が姿を消したことに危機感を抱いていました。

「車がある方はいいですけど、小さなお子さんだったりとか学生さんは、遊んだ時にふらっと立ち寄る所定がないってのは、ちょっと寂しいかなと思って。なので、紙に触れる機会を増やしたいっていうのがあって、ここに書店を作りました」

特に近くに高校があることから、「駅で待つ間とか読んでもらいたいと思って」「どうにか活字離れからも戻ってきてもらいたい」という、地域の読書環境を支える使命感が、この書店を誕生させました。

店名の「サランバン」は韓国語で、「もてなす部屋とか、情報交換の場みたいな、もうたまり場みたいな意味を持ってます」と西村さんは説明します。

「ここに来て本に触れたり、情報を交換をしたりくつろいでいただく」という場所を目指しており、そのためにカフェスペースも併設されています。

「本付きで読んでるとこの本のここがとかたくさん話したいっていうのがあるので共有したいんですよね」

西村さんの「本について語り合いたい」という想いが込められた空間設計は、訪れる人々に心地よい交流の機会を提供しています。

「サランバン」では、デジタルでは得られない紙の本ならではの価値を大切にしています。

「あまり興味がない分野だったのに気になるとか、表紙を見てジャケ買いみたいな方も出てくるかなっていう」

西村さんが語るように、紙の本だからこそ生まれる偶然の出会いは、「街中の本屋さんの醍醐味」として、現代においても重要な価値を提供しています。

また、ユニークな「シェア本棚」システムも導入されています。これは本棚のスペースを貸し出し、利用者が商品を並べて小さなお店を作ることができるシステムで、現在6名の方が古本、雑貨、アクセサリーなどを販売しています。このシステムは、地域の人々の「何かを表現したい」という想いを形にする場としても機能しています。

多久市に復活した「ブック&カフェ サランバン」は、単なる書店やカフェではなく、本と人、人と人が繋がる交流の拠点です。図書館司書の経験を持つ店主の強い想いと、韓国語の店名に込められた「たまり場」という意味の通り、地域の読書環境を支え、文化を灯す小さな灯台のような存在となっています。

紙の本ならではの偶然の出会いや、シェア本棚を通じた地域住民の表現の場など、西村さんの情熱が詰まったこの空間で、心豊かなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

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