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2025.12.13

玄海町の廃校舎がデータセンターに変身⁉ AIブームが地方に新風

佐賀県玄海町で、時代の大きな変化を象徴する取り組みが始まっています。10年前に閉校した小学校の校舎が、最先端のAIデータセンターとして生まれ変わったのです。「やっぱりIT系といったら東京、首都圏、九州だと福岡とかですよね。でも、田舎というか、玄海町でこういう仕事ができるのはちょっとすごいことだなと思いました」——東京の企業が地方の廃校舎を選んだ理由には、生成AI時代の新たなビジネス環境が深く関わっています。

閉校から10年、有徳小学校に新たな命

玄海町にある有徳小学校は、2015年に閉校してから10年間、静寂に包まれていました。体育館やプールの跡地が残る中、今年8月から校舎の2階部分で全く新しい活動が始まりました。

「GPUサーバーと呼ばれるサーバーを動かしています。なので、データセンターとして活用している形になります」と説明するのは、株式会社ハイレゾの志倉喜幸社長です。同社は東京に本社を置く企業ですが、なぜ佐賀の小さな町を選んだのでしょうか。

学校の面影を残しながら最先端技術を運用

校舎内は見事に改装されており、かつての玄関は現代的なオフィス空間に変わっています。しかし、データセンターとして使用していないスペースには、当時の学校の姿がそのまま残されています。

音楽室では、ベートーヴェンやモーツァルトの肖像画が今も壁に掲げられています。黒板や畳を残したミーティングルームもあり、「いい雰囲気ですね」とリポーターも感嘆の声を上げました。

地元雇用で運営される最先端施設

注目すべきは、このデータセンターで働く職員が全員玄海町の住民だということです。「東京から来ている人は1人もいないですね」と志倉社長は説明します。

ある男性職員は「もともと端末等の修理の仕事をしてたんですけども、やはり地元にパソコンの修理とかそういう関係の仕事がなくてですね、この仕事が出るって聞いて、半年前ぐらいからいつ求人とか出るんやろうなと思ってて、出た瞬間に応募したような感じで」と転職の経緯を語ります。

一方、全くの未経験から挑戦した女性職員もいます。「新しいことに挑戦をしようと思って来ました」と話し、「難しいですね。新しいことばかりなので。勉強中です」と現在の心境を明かしました。

センター長を務める男性は「やっぱりIT系といったら東京、首都圏、九州だと福岡とかですよね。でも田舎というか、玄海町でこういった仕事ができるのはちょっとすごいことだなと思いました」とコメントしています。

電力コストが決め手となった立地選択

東京の企業がなぜ玄海町を選んだのか。その理由は、AI時代特有の技術的要求にありました。

「実はGPUサーバーはですね、電力をすごい使うという特徴がありますので、玄海町は電源立地地域という形なので、やはり電気代の補助金等がいただけます。こういった電気代が主な仕入れになりますので、すごいインパクトがあるというところですね」と志倉社長は説明します。

生成AIの登場が大きな転換点になったといいます。「昔でいう1台のサーバーが、今だと1台で三十台、四十台ぐらいの電気を使うようなサーバーになってきました」

世界最先端の技術を地方で運用

サーバールームは撮影禁止区域となっていますが、リポーターが音声のみで内部の様子を伝えました。「もうファンの音がとにかくすごいですね」という第一声からも、その稼働の激しさがうかがえます。

現在3つの教室がサーバールームとして活用されており、世界最大手のアメリカ・NVIDIA社の半導体が搭載されています。「外からの空気をこれで取り込むというのに使っています。やっぱりそのサーバーはすごい高熱を発しますので、その高熱をいかに温度を下げるかという形です」と冷却の重要性を志倉社長は語ります。

学校の校舎は元々耐震性に優れているほか、この場所では裏山から来る冷たい空気を冷却機能に利用して、エアコンなどの電力使用を抑えることができる立地的メリットもあります

多様な業界から注目集める

このデータセンターの利用者は多岐にわたります。「生成AIを作るようなベンチャー企業さんですとか、あとこれからその生成AIを作ろうとされている大企業さん、あとはやはり大学、大学さんなんかも非常に利用いただいております」と志倉社長は説明します。

地方経済に新たな可能性

従来、データセンターの約9割は東京・大阪の二大都市圏に集中していました。保守人員の確保や通信速度の維持という理由からでした。

しかし、AI向けの半導体チップは従来に比べて設備が熱を帯びやすく、冷却にも大量の電力を使うため、消費電力が大きな課題となっています。このため、地方の原発立地地域でのデータセンター設置が増加することが予想されています。

志倉社長は将来の展望について「AIが出てきたことによって、こういったデータセンターが地方にどんどんどんできていくと、それはやはり地方の方がコストメリットがあったりですね、当然土地とか建物とかも広かったりしますので、そういったところがやはりGPUサーバーを動かすには非常に合っています。今まで無かった地域に新しい産業が生まれると、経済効果というのはやはり大きいと思いますので、これをどんどん広げていくというのは重要だと思っています」と語ります。

まとめ:拡張への期待と新たな可能性

現在はまだ空き教室が多く残されており、サーバーの拡張とともに雇用の拡大も計画されています。「まだまだ教室も余っていますし、サーバーも拡張できますので、それに応じて人員雇用というのを拡大していくというふうに考えています」と志倉社長は意欲を示します。

政府でも地方でのデータセンター設置を後押しする政策の動きがあり、廃校舎の活用という地域課題の解決と、AI時代の新産業育成が見事にマッチした事例として注目されています。

玄海町の取り組みは、人口減少や施設の有効活用に悩む全国の地方自治体にとって、新たな可能性を示すモデルケースとなりそうです。AIという最先端技術が、地方に新しい雇用と経済効果をもたらす時代が始まっています。

施設情報
  • (旧)玄海町立有徳小学校
【2025年12月9日放送 サガSagace より】

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