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2025.12.22

佐賀発ベンチャー企業「スチームシップ」が急成長!ふるさと納税で地域の魅力を全国へ

創業からわずか8年で社員数3人から400人へと急成長を遂げた佐賀発のベンチャー企業「スチームシップ」。同社はふるさと納税の返礼品事業に特化し、自治体と事業者を結ぶ架け橋として注目を集めています。12月はふるさと納税の駆け込み寄付が増える繁忙期。現場では佐賀牛をはじめとする返礼品の手配に追われる中、若い社員たちが地域の魅力発信に情熱を注いでいます。「佐賀に若者の帰りたくなる会社を作りたい」創業者の想いから始まった挑戦は、今や1兆円市場で輝きを放っています。

12月の駆け込み寄付に対応する現場

ふるさと納税は所得税や住民税の控除制度として12月31日までに決済するのが年間の区切りとなっているため、12月は駆け込みでの寄付も多い月として知られています。

道の駅内の精肉店を訪問するスチームシップの酒井さん。佐賀県の返礼品で人気の佐賀牛を扱う石丸食肉産業との打ち合わせが行われていました。

「先週と比べて数字で言うと今楽天が2.8倍アクセス数が増えている状況なので」と酒井さんが報告すると、石丸さんは「いかんせんちょっと年末なので、イレギュラー発生するかと思いますけど対応できればいいかなと思っております」と応答。

酒井さんは続けて「例年に比べてキーワード検索でもあるんですけど、しゃぶすき、しゃぶしゃぶすき焼き用が今年多く出てるっていう傾向があって」と今年の傾向を説明。石丸さんも「付加価値のついた商品をやっぱもうちょっとクオリティ上げて、自治体さんと三位一体となってできればいいかなと思ってます」と意欲を示しました。

自治体から委託を受けるふるさと納税のプロフェッショナル

スチームシップは自治体から委託を受けてふるさと納税の返礼品の事業を行っている会社です。現場を訪問する酒井さんの仕事について、リポーターが尋ねると「今はですね、事業者さんと12月駆け込み(寄付)に向けたですね、在庫調整と令和7年度の入り具合が今どんな感じなのかっていうのをお伝えしに来た次第です」と説明しました。

石丸さんは「こうした方がいいよとアドバイスをいただきながら、我々も全国に商品をPRしていく。お肉屋さんなんですけども、そのお肉を発信していく。ということを、スチームシップさんには、わかりやすく説明してもらっています。もう同世代なので、友達のように」と協力関係の良さを語りました。

事業者目線を大切にする現場主義

酒井さんが事業者との交渉で心がけていることについて「事業者目線に立ってお話できるようには心がけております。やはり我々の方、社内ですと数字を追ってしまっているので、現場の雰囲気というのが分からないので、我々が足を運んで現場を見ることを心がけています」と現場主義の重要性を強調しました。

興味深いことに、酒井さんは「私個人の話になるんですけども、もともと東京生まれ、東京育ち。移住をする決め手になったのも、佐賀県という魅力を、地域の知らなかったことがたくさんあったので、それを全国に伝える、何かそういうことを僕にできないのかなと思って」と、東京から佐賀への移住の経緯を語り、地域の魅力発信への想いを明かしました。

スタイリッシュなオフィスで働く若い社員たち

スチームシップは有田町や長崎県の波佐見に本店・本社を構える企業で、一昨年佐賀市にもオフィスを開設しました。オフィス内はスタイリッシュな造りで、給湯室のような空間にはコーヒーメーカーや冷蔵庫があり、「くつろぎスペース」と呼ばれるエリアでは大勢でのミーティングや昼食時に社員が集まります。

社員平均年齢は32.3歳と若く、30歳前後のメンバーが多数を占めています。職種も多彩で、返礼品の企画や自治体とのやりとりを窓口で行うディレクター、寄付者様の対応を行うカスタマーサポート、社内の様々なツールの管理やシステム関係を担当するエンジニア、ブランディングや広報を行うクリエイティブチーム、返礼品が魅力的に見えるようにデザインするデザイナーなど、それぞれが専門性を活かして働いています。

8年間で400人規模に急成長

8年前に創業して以来、社員数も事業所数も急成長しているスチームシップ。九州北部に軸足を置きながらも、関東や北海道にも事業を伸ばしています。オフィスでは藤山社長が「毎日価格変わってもいいかなと思ってて。AIが考えて」と、価格設定にAIを活用するアイデアについて社員と議論する場面も見られました。

「佐賀に若者の帰りたくなる会社を作りたい」

創業者の藤山社長は佐賀市出身の42歳。創業の経緯について「創業の経緯は、佐賀に何もなかって言って、誰でも、都会に行ってしまっているじゃないですか。佐賀から人が」と佐賀の現状を憂いていたことを明かしました。

「そしたら、佐賀に若者の帰りたくなる会社を作ったら」と続け、社名の由来についても「佐賀藩が150年前に作った蒸気船凌風丸。そこからインスパイアを受けて『スチームシップ』。ふるさと納税に特化した会社っていうのは当時なかったので、ここを活路に見いだせば、地方がまた復活するんじゃないかと」と説明しました。

「若者にたくさん佐賀に来てもらって、佐賀いいなっていう人たちをもっと増やしたい」と、地域活性化への強い想いを語りました。

佐賀・九州出身者が多数を占める社員構成

九州外から採用された社員も一定数いますが、やはり佐賀や九州出身の社員が多くを占めています。武雄市出身の女性社員である熊谷さんは、今村温州みかん専門店の笹川さんと打ち合わせを行っていました。

熊谷さんは「そうですね。ふるさと納税としてもある程度12月が区切りではあるんですけど、その後もずっと寄付される方いらっしゃるし、翌年の1月からですね、また翌年のふるさと納税の期間に入るので、ちょっと単価高くても寄付は入るというところで。相性とっても良いと思います」と時期的な優位性を指摘しました。

若い発信力と事業者支援への想い

今村温州みかんの笹川さんは、スチームシップの若い社員たちとの協力について、「若い人の、発信力っていうのはホームページを作る中でも、自分たちだと想像しなかったような、こういうコメントとか写真でやられるんだというのは、若い人ならではなのかなというふうに思いますね」と評価しました。

佐賀の魅力を発信するプラットフォームとして

藤山社長はふるさと納税の意義について「佐賀の魅力って、その魅力度ランキングだけじゃ絶対測れないと思うんです。ふるさと納税であれば、それこそ佐賀の魅力を実際に手に取って、味わって、なんなら体験することもできる。佐賀の魅力を発信するプラットフォームとしては重要なマーケットだと僕は思っておりますので」と語りました。

県内トラブルへの対応と信頼回復への取り組み

しかし佐賀県内では、ふるさと納税に関連して、自治体や委託業者によるトラブルも多発している現状があります。この問題について藤山社長は「構造的な問題、やはり市場がバーッと伸びたので、そこに町(自治体)の職員さんだけでやると、どうしても追いつかない部分であったりとか、事業者さんもそうだと思うんですけど」と市場拡大のスピードに対応が追いつかない構造的課題を指摘しました。

「制度がどんどんこう変わっていく中で、そのスピード感にやっぱついていかないといけないと思いますし」と続け、「もったいないですよね。町の名前だけがやっぱ出ちゃうと、この中に真面目に作ってらっしゃる方とかもいらっしゃると思うんですけども、どうしてもその町っていう単位で見られると、『あーっ』てなっちゃうので、ふるさと納税に関して言うと」と風評被害への懸念を示しました。

その上で「なんとかこういったところの信頼というか、また応援してもらえる人たちを、佐賀にたくさん寄付してもらえる人たちを増やしていける、お手伝いをしていきたいなとは思ってます」と信頼回復と佐賀ファン拡大への決意を語りました。

1兆円市場へと成長したふるさと納税

ふるさと納税の全国の寄付額はこの10年でも急速に伸びており、既に1兆円市場となっています。2023年には1.12兆円、2024年には1.27兆円と右肩上がりの成長を続けています。

まとめ:地方創生のモデルケースとして

様々な問題の再発防止を図りながら、県内の自治体とスチームシップのような民間企業が協力して取り組んでいく体制が求められています。地域の魅力を全国に発信し、「信頼」と「応援」のもとで持続可能なふるさと納税事業を展開していく同社の取り組みは、地方創生の一つのモデルケースとして注目されています。

「佐賀に若者の帰りたくなる会社を作りたい」という藤山社長の想いは、確実に形になりつつあります。佐賀発のベンチャー企業スチームシップの挑戦は、地域の若者たちが故郷で働く場を創出し、全国に佐賀の魅力を届ける架け橋として、今後も成長を続けていくことでしょう。

1兆円市場で輝く佐賀発ベンチャーの物語は、まだ始まったばかりです。

【2025年12月16日放送 かちかちLIVE サガSagace  より】

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