ピックアップ
pickup
佐賀で広がる若者の起業 「自分らしい働き方」を選んだ20代の挑戦
「起業」と聞くと、一部の特別な人だけが挑戦する世界だと思っていませんか。
しかし今、佐賀では20代の若者たちが次々と起業という道を選び、自分らしい働き方や生き方を形にしています。
学生時代の経験を生かして事業を始めた人。子育てと仕事を両立するために店を開いた人。それぞれの挑戦には、“佐賀だからこそ”の環境も大きく関わっていました。
今回は、佐賀で新たな一歩を踏み出した若者たちのリアルな声を取材しました。
20代の起業が増加 佐賀でも高まる挑戦の機運
日本政策金融公庫によりますと、2025年度に創業融資を受けた20代以下は全国で3709件。2023年度よりおよそ545件増加しています。
こうした流れは佐賀県でも見られていて、若い世代の起業への関心が年々高まっているといいます。
背景には、就職だけにとらわれない働き方への価値観の変化があります。
「自分たちらしい仕事がしたい」
「もっと自由な働き方をしたい」
そんな思いを持つ若者たちが、佐賀で挑戦を始めています。
学生時代に起業 部活動支援に取り組む「株式会社WIDE」
最初に話を聞いたのは、株式会社WIDE代表の北原誠大さん(25)です。
北原さんは大学在学中に起業。今年で5年目を迎えます。
教育学部で部活動について研究した経験を生かし、現在は部活動と外部指導者をマッチングするサービスなど、学生スポーツに関わる事業を展開しています。
なぜ大学生で起業したのか
起業のきっかけは、コロナ禍でした。
大学2年生の時、地元に戻ってきた高校時代の同級生たちと将来について話す機会が増えたといいます。
「このままみんなで仕事したいよね」
そんな会話から、起業の話が動き始めました。
さらに北原さんには、高校時代の成功体験もありました。
学校祭で多くの人を巻き込み、盛り上げた経験です。
「自分たちなら社会を変えられるんじゃないか、という謎の自信がありました」
学生時代の経験が、今の挑戦につながっています。
起業で最も苦労したこととは?
順調に見える起業生活ですが、もちろん苦労もありました。
特に難しかったのは、「どうやってサービスに価値を感じてもらい、お金をいただくか」という点だったそうです。
地道に営業を続け、少しずつ認知を広げていった北原さん。
初めて売上が口座に入った時の感動は、今でも忘れられないと話します。
「佐賀だからこそ挑戦しやすい」
北原さんは、佐賀で起業するメリットについても語ってくれました。
東京や福岡では、学生起業家は珍しくありません。
しかし佐賀では、若くして挑戦する人がまだ少ない分、注目されやすい環境があるといいます。
さらに、地元企業の経営者とも距離が近く、紹介やつながりが生まれやすいことも大きな強みです。
「挑戦している人を応援してくれる空気がある」
北原さんは、佐賀の土地柄や人柄が、若者のチャレンジを後押ししていると感じています。
また、起業時には県内のスタートアップ支援組織を活用。知識がなくても相談できる環境があり、安心して挑戦できたといいます。
「失敗はリスクじゃない」
北原さんは、若い世代に向けてこう話します。
「失敗は、若いうちは全然リスクじゃない」
起業を必要以上に難しく考えすぎないことも大切だといいます。
まずやってみる。
その一歩が、未来につながっていくのかもしれません。
子育てと仕事を両立するためにカフェを開業
続いて訪ねたのは、カフェパティスリーステラのオーナー・定松翼さん(26)です。
2026年3月、佐賀市東与賀町の複合施設内にカフェをオープンしました。
店内には、地元食材を使ったケーキや焼き菓子が並び、ゆっくり過ごせるイートインスペースも設けられています
人気のチーズケーキ こだわりは“焼き方”
看板メニューのひとつがチーズケーキです。
濃厚なチーズのコクに、クランブルのサクサク食感と塩味がアクセントになっています。
使用するチーズは2種類。
さらに、焼き方にも工夫があります。
湯煎焼きにすることで、水蒸気によって生地の水分が飛びにくくなり、しっとりとした口当たりになるそうです。
一口食べると、なめらかな食感と濃厚な風味が広がります。
なぜ独立を決意したのか
定松さんは、県内の洋菓子店や旅館で7年間経験を積んできました。
しかし、今年2月に退職。わずか3週間後には自身の店をオープンしました。
背景にあったのは、子育てと仕事の両立です。
子どもの急な発熱などで、職場に迷惑をかけてしまうこともあったといいます。
その中で、
「自分が社長だったら、自分で判断できる」
そう考えるようになりました。
もともと強く独立願望があったわけではありません。
しかし、自分と家族にとって働きやすい環境を考えた結果、起業という選択にたどり着いたそうです。
設備付き物件との出会いが後押し
起業で大きな壁になる資金面。
しかし定松さんは、設備がそろった物件に出会えたことで、初期費用を大きく抑えることができました。
コンロや冷蔵庫などがすでに設置されていたため、無理のないスタートが切れたといいます。
なぜ“カフェ”という形を選んだ?
定松さんがカフェを選んだ理由は、「自由度の高さ」でした。
ケーキも置ける。
料理も出せる。
お酒も提供できる。
カフェという形なら、やりたいことを柔軟に広げられると感じたそうです。
現在は週末の夜営業もスタートし、少しずつ店の可能性を広げています。
「全部自分に返ってくる」
オープンから2カ月。
今の思いを聞くと、「全部楽しい」と笑顔を見せました。
自分が作ったものを「美味しい」と言ってもらえること。「また来るよ」と声をかけてもらえること。
その一つひとつが、やりがいにつながっています。
一方で、成功も失敗もすべて自分に返ってくる。
それが起業の大変さでもあり、魅力でもあると話します。
起業したい人へ伝えたいこと
最後に、これから挑戦したい人へのメッセージを聞きました。
「迷っているなら、まず踏み出してみた方がいい」
もちろん、何も考えずに始めればいいわけではありません。
しかし、考えすぎて動けなくなるより、一歩踏み出してみることが大切だといいます。
佐賀で広がる“自分らしい働き方”
今回取材した2人に共通していたのは、「自分らしく働きたい」という思いでした。
大都市ではなく、佐賀で挑戦する。
その背景には、人との距離の近さや、挑戦を応援する地域の空気があります。
若者たちの新しい挑戦は、これからの佐賀の働き方や地域の未来を、少しずつ変えていくのかもしれません。

