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不審船と銃撃戦繰り広げた巡視船「いなさ」引退

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海の安全を守って30年、唐津海上保安部に所属していた巡視船「いなさ」が老朽化に伴い、先週その役目を終えました。この巡視船は、約20年前、国民が驚愕したある事件の中心にいました。

「いなさも反撃を受けた」「現在該船向け発砲中」「位置とってください位置!」
2001年、日本中を驚かせた不審船事件。このとき活躍した巡視船が今月、引退しました。
今月10日。唐津海上保安部に所属する巡視船「いなさ」は引退前最後の航海に向かいました。約30年にわたり密輸など海上犯罪の取り締まりや海難救助など海の安全を守ってきた船です。

去年4月から最後の船長を務めた松田政文さん64歳。30年間蓄積された船へのダメージは大きく、約1年3カ月の間に100を超える故障に見舞われたといいます。
巡視船「いなさ」松田政文船長:「機関室の天井から雨漏りしたとかですね/乗組員も愚痴の1つもやっぱり言いたいところもあるんでしょうけど、ぐっと我慢して最後まで看取ってあげようと」

「いなさ」は当時まだ珍しかった時速65キロ以上の高速で走れる小型巡視船として作られ、1990年に長崎海上保安部に配属されました。それから11年後、「いなさ」は北朝鮮の工作船と命を懸けた戦いを繰り広げることになります。
2001年12月、奄美大島の南西沖で「いなさ」に加え海保の巡視船「あまみ」「きりしま」「みずき」の4隻が“不審な船”と対峙。国内に衝撃が走ります。

事件をよく知る人物が佐世保市にいます。白石町出身の白武敏美さん65歳。当時「いなさ」の航海長でした。
佐世保海上保安部 白武敏美さん:「その当時はよくそういう(不審船の)情報があってたびたび緊急出港で出ておりましたんでまあ、またかというような気持ちで出港した」Q「まさかああいうことになるとは?」「そうですね、全然思ってなかったですね」
不審船を見つけた「いなさ」はすぐに停船命令を出しましたが反応なし。海保としては48年ぶりとなった威嚇のための船体射撃に踏み切ります。

佐世保海上保安部 白武敏美さん:「船体射撃は私はそん時初めてです。最初で最後ですね。射撃の射手がここにおりまして、あとこっちに舵をとる操舵手がおりまして、操舵を命じながらこっちで「発射」とか射撃の指示をすると」
それでも不審船は逃走を続け、時刻は午後10時すぎ、暗闇の中でついに…
佐世保海上保安部・白武敏美さん:「パンパンパンパンというような音とともに光があれして『あまみときりしまが撃たれている』というようなことで、その直後に本船の方にもパンパンパンパン当たってきて本船も撃たれたということで、それと前後して本部からも『正当防衛射撃実施せよ』と指示がありまして」

激しい攻防が記録されたVTRには決死の覚悟で指示を出す白武さんの声が残っています。「撃て!」
佐世保海上保安部 白武敏美さん:「はっきり言って船体の真ん中中央狙って(撃った)」
「いなさ」も20数発ほど被弾し、片側のエンジンが使えなくなりました。
佐世保海上保安部 白武敏美さん:「やるしかないということで撃ちましたけど、うちにも撃ってる横に弾がきてるんで。正当防衛射撃の最中に白い光を見たと、私も見たんですけど、それ後から考えれば、ロケットランチャーじゃなかったかなというような話もありますし、当たってたら今私いないと思います」

正当防衛射撃を開始してまもなく不審船は爆発とともに沈没しました。自爆とみられています。
佐世保海上保安部 白武敏美さん:「沈んだあと、それも赤外線の装置で見えるんですけど14,5名海面に浮いているのが見えました。それで風上に行って、浮き輪っていうんですか救命浮環を流して救助するような恰好で救命浮環を何個か各船で流しました。それでも最終的にまあ人影が見えなくなったというところです」
海保側は「あまみ」の乗組員3人が負傷しましたが、幸いにも死者はいませんでした。
その後「いなさ」は鹿児島港に向かいますが、港には大勢の報道陣が待ち構えていました。そこで初めて、大事件として報じられていることを知ったのです。

佐世保海上保安部 白武敏美さん:「その当時はテレビもその衛星あたりも全然映らないし。そこらへんにいる魚釣りの船とかなんとかが、みんな向かってきて手振るんでですね、なんかおかしいんじゃないかなというような気がして」
その翌年、不審船は現場から引き揚げられ、北朝鮮の工作船だったことが判明、この事件を教訓にさらに大型で高速の巡視船が作られることになります。

「いなさ」は事件から約4年後の2005年、唐津海保に配属替えとなり、船長になっていた白武さんの手で唐津に運ばれました。
佐世保海上保安部 白武敏美さん:「私も今年度で完全な退職ということで、「いなさ」も時期同じく年度で解役ということで非常に感慨深いものがあります」

迎えた引退の日。数ある海保の船の中でも事件で共に戦った4隻のみが持っている長官表彰の記念プレートも取り外されました。これまでに走った距離は約60万キロ、地球15周分、救助した人数は150人、海上犯罪の検挙は507件に上ります。

佐世保海上保安部 白武敏美さん:「現役時代で12,3隻巡視船乗ったんですが、やっぱり一番思い入れが深い船で」「『ご苦労さん』という気持ちが大きいですねやっぱり。慰労したような気持ちがあります。よくやってくれたと思います」

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