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アゲマキ資源回復へ!佐大が新たな一手となる研究成果を発表【佐賀県】
2021/05/24 (月) 19:00

20年以上前にその生息数が激減し、ほとんど漁ができない状況が続いている有明海の二枚貝、アゲマキ。
先月、佐賀大学の研究グループがある研究成果を公表しました。
資源回復への新たな一手にもなり得るというその発見とは?
佐賀大学農学部 折田亮助教:「驚きですね。不思議!というその好奇心を駆り立てるような“2集団存在したんだ!”という」
佐賀大学農学部の折田亮助教33歳。海洋生態学を専門とし、中でも海の底で生きる底生生物を研究しています。
佐賀大学農学部 折田亮助教:「かつてその佐賀県沿岸でたくさん獲れていた貝、いま資源回復というのが望まれている二枚貝の一つでもあるので、このアゲマキガイというのに注目しました」
有明海特有の二枚貝、アゲマキ。
1980年代までは年間400トンから500トンの漁獲があり、塩焼きやバター焼きなどにして県内の食卓に並んでいました。
鹿島ガタリンピックでは来場者にアゲマキの味噌汁がふるまわれていたことも。
県有明水産振興センター 佃政則さん:「アゲマキが獲れなくなって20年以上経ってきていますので、なかなか昔は食べていたけどね~という方がやはり多くて、いまの若い人たちはやっぱり食べたことがないという方がやはり多いですね」
アゲマキなど主に二枚貝の資源回復に取り組む県有明水産振興センターの佃政則さんです。
県有明水産振興センター 佃政則さん:「こちらが今年の1月に放流して、調査で採集してきたアゲマキになります」
1990年代に漁獲がほぼゼロになったアゲマキ。
県はその後、幼い貝、稚貝を人工的に生産し放流することで、卵を産む親貝を増やそうという取り組みを続けています。
リポート:「アゲマキの漁は海岸線からすぐの干潟で、漁師が潟スキーを使って行います。1つ1つ手作業で漁をしている様子がうかがえます」
取り組みの成果もあり2018年には漁業者や期間を限定する“管理操業”という形で漁が解禁に。20年以上ぶりのことでした。
しかしその後、豪雨や食害により再び大量に死んでしまい、おととし以降漁が行われることはなく今年の禁漁もすでに決まっています。
県有明水産振興センター 佃政則さん:「上手くいかないときはもう非常に残念というかもうガックリくるんですけど/なんとかその稚貝を残せないかということを次にというところでいま考えて取り組んでいるところです」
そんな中、なかなか思うように進まない資源回復への道を照らす佐賀大学の発見とは…。
佐賀大学農学部 折田亮助教:「有明海の佐賀県沿岸に生息するアゲマキガイに遺伝的差異がある集団というのが2つ存在することが初めて明らかになったことが今回の発見になります」
つまり、有明海のアゲマキは種類は同じでも遺伝子レベルでは大きく2つに分けられるということ
佐賀大学農学部 折田亮助教:「サンプルは生きた状態でいただいて、生きているうちにもう開いてしまって、各部位ごとに分けて保管しています」
研究に使ったのは県有明水産振興センターから提供を受けたサンプル。そこからDNAを抽出していきます。
佐賀大学農学部 折田亮助教:「たんぱく質と脂質を取り除くための工程になります」
Q「これを入れたら取り除ける?」「そうですね」
Q「ちなみになんという薬品?」「えっと、フェノールクロロホルムイソアミルアルコールというのの混合液になっています(笑)」
佐賀大学農学部 折田亮助教:「ここに白いものがもやもやと…。このひらひらしているのがDNAになります」
このようにして抽出したDNAから遺伝子情報を文字列で視覚化し解析を進めた結果が遺伝的に異なる2つの集団がいるという発見でした。
長年、アゲマキに携わっている佃さんは驚きを口にする一方でそういう予感もあったといいます。
県有明水産振興センター 佃政則さん:「その結果を聞いて、思い当たる節はちょこちょことはあって、例えば放流しても生き残るときと生き残らないときがあったり、(親貝を採取した)地先によって、明らかにその産卵の時期がずれていたりとかもしていましたので」
ところで、そもそも有明海のアゲマキが2つの集団に分けられたとして、どのように資源回復につながるのか。
佐賀大学農学部 折田亮助教:「まだあくまで可能性の一つではありますが、有明海というのは水温の変化であったり、塩分の変化という環境変化が大きくて、こういう環境要因に対する適応というものが異なっているかもしれない」
県有明水産振興センター 佃政則さん:「(有明海は)北から南まで広い塩分勾配があります。なので、低塩分に強いものであれば、低塩分海域に放流したりとか、塩分に強い集団であれば、南の方の高塩分になりやすい海域に放流するとか」
一般的に集団が異なればそれぞれに生態学的な特性があることがほとんどで、それを上手く生かせばより効果的に、資源回復に取り組めるようになるかもしれないのです。
今後はまず、2つの集団を簡易的に判別できる検査方法を開発した上で、それぞれの集団が持つ特性を検証していく方針です。
佐賀大学農学部 折田亮助教:「おいしい貝なので、たくさん増えて、有明海でそういう二枚貝アゲマキガイがたくさん獲れるというような時代がまた来たらいいなというその一助になればと思っています」
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