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"停電しない避難所"医療的ケア児の避難に電源確保で自治体格差も【佐賀県】

2022/02/01 (火) 18:30

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2020年、台風が接近した際、佐賀市は初めて障害のある人などを対象とした「福祉避難所」を開設しました。
避難した人は、医療機器を使うための安定した電源が確保できてよかったとする一方で、運営の課題も見えてきました。

「もうとにかく安心な場所に行きたいという一心だった」
2020年9月に猛烈な勢力を保ったまま日本へ接近した台風10号。
県内でもおよそ2万7000戸が停電しました。
このとき、佐賀市は初めて「福祉避難所」を開設しました。

【佐賀市障がい福祉課・上野良知課長】
「当時、避難で使った部屋。4世帯の方がこちらに避難された。赤いコンセントが非常用電源ということで停電の時も使える電源。簡単なパイプベッドや下に敷くマットなど最低限のものだけ用意して」

佐賀市に住む山本可奈子さん。
息子の歩夢さんは、脳や脊髄からの信号が届かず筋肉を動かすことが難しい「脊髄性筋萎縮症」という難病です。
生活をしていくには、人工呼吸器が必要です。

台風が最接近した2日前、山本さんは人工呼吸器を動かし続けるために安定した電源を求めて事前に避難しようと準備をしていました。

【山本可奈子さん】
「その前に千葉の大きな台風被害のことがよぎるぐらい近い時期にあって、長期的に逃げないといけなかったらどうするんだろうねとちょうど保護者でもすごく話していた時期だった。もうとにかく安心な場所に行きたいという一心だった」

山本さんのもとへは、市から直接電話があり、「安定的な電源が必要な人を対象にした福祉避難所」を市役所に急きょ設けることが伝えられました。

山本さんは、医療機器や薬などを車に積んで市役所へ向かいました。
佐賀市役所の「福祉避難所」には、4家族あわせて13人が避難しました。
そのうち、山本さんを含む3家族には人工呼吸器などが必要な医療的ケア児がいたと話します。

【山本可奈子さん】
「電源が落ちませんよということはすごく何よりも必要なことだったので。無事過ごせてよかった」

【スタジオ解説】
(キャスター)取材した長島記者です。
命を守るための避難なのでどのような支援を必要としている人がいるのか把握することが大切ですよね。

(長島記者)ただ場所を移せばいいというわけではなく、山本さんの息子さんのように医療機器を動かし続けないと命に関わる方もいるので取材をするなかでニーズを事前に把握しておくのは重要だと感じました。

(キャスター)なぜ佐賀市役所に開設されたのでしょうか?

(長島記者)非常用の電源設備があったからです。
停電しても使うことができるというのがポイントです。
無事避難することができた山本さんですが利用したからこそ気付いた課題もあったようです。

【山本可奈子さん】
「ハンモックみたいな簡易ベッドだったので、もうちょっと硬いのがいいねという話はしてたよね。沈み込むとやっぱり呼吸がしづらかったりするので。目隠しが必要だというのもなかなか最初は伝わらなくて。目隠しになるようなパーティションを黒板と新聞紙を貼り付けたような感じで作らせてもらって。簡易ベッド上でちょっと排泄ケアはさせてねと本人に言って見えないようにだけ配慮してケアをしてたような状態だった」

佐賀市は、医療的ケア児の場合、個人によって配慮が必要な点が違うため、設備や人の配置など個別の避難計画を作る必要があると話します。

【佐賀市障がい福祉課・上野良知課長】
「医療的ケア児の方、要援護者含め個別の対応が必要だと思う。災害時にその人がどう過ごすかどこにどう避難するかを決めていくのは大事だと思うので逐次、個別の計画に取り組めていけたら」

この経験を元に、山本さんは市にプライベート空間の確保などを求める要望書を出しました。

【山本可奈子さん】
「避難に対してのハードルが高いというのは医療的ケア児に関してはあると思う。いろんなところが協力して支えてくださっているけどそこからこういう時にはじゃあみんなでこうしようという方向性が出てくるともう少し安心して準備したりそういうことが起こった時にも動けるのかなと思っている」

(キャスター)
県内の他の市町の状況は?
(長島記者)
まず、佐賀市はおととしの経験を踏まえて電源が必要な人の避難場所を市役所から自家発電システムがあるエコプラザに変更しました。
市役所よりも広いスペースが確保でき、自家発電なのでより安定した電源が供給できるためです。
ただ、非常用電源を備えた公共施設が多くあるわけではないので市町は場所の選定に苦労しているようです。
ある自治体は安定した電源を確保できる介護施設などに要請し受け入れができるよう調整しているそうです。
(キャスター)
施設だけではなく、人の配置も課題のようですね。
(長島記者)
佐賀市は職員数が多いため運用することができましたが、全ての市町が同じようにできるとはかぎりません。
例えば、佐賀市のエコプラザに開設される避難所を他の市町の人も使えるようにするなど市町の連携も必要なのかもしれません。

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