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~戦後80年~変化する記憶の継承 2025年佐賀を振り返る【佐賀県】

2025/12/23 (火) 18:18

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2025年の佐賀をテーマごとに振り返るシリーズ。23日は「戦後80年」について。
戦争を知る世代が減っていく中、記憶のバトンは次の世代に受け継がれています。

【県遺族会 西田富子会長】
「一日も早く戦争のない、皆が笑って過ごせる平和な日々が訪れることを切に願います」

今年10月に行われ、約1200人の戦没者遺族らが出席した佐賀県戦没者追悼式。
これまで戦後30年の1975年から20年ごとに開かれていましたが、遺族の高齢化を受け10年前倒しで戦後80年の今年、開かれました。

式典の中では“記憶の継承”についての誓いが立てられました。

【県遺族会 西田富子会長】
「戦争の悲惨さ、そして尊い犠牲の上に今の平和があるということを、次の世代へとしっかりと伝えてまいります」

誓いを立てたのは県内の戦没者遺族らの団体、県遺族会の会長をつとめる西田富子さんです。
西田さんの父親は母親のお腹の中にいる西田さんを残して29歳で戦死しました。

【県遺族会 西田富子会長】
「子どもできたよ、生まれたよってもし父のもとに届いていたら帰ってきたかも分からない」

80歳の西田さんは自らの体験などを長年語り継いできましたが、今年は初めてろう学校での講話も。
目で見てわかりやすいようにスライドを使うほか、手話での通訳をお願いするなど工夫をこらしました。

【西田富子さん】
「私はね、一度でいいからお父さん、って呼んでみたかったんです」

そして“記憶の継承”の新たな形は他にも。

「私は本当に悔しい、悲しい、この子の姿を見たかったろうし、抱いてもらいたかった」

今年8月、終戦80年の節目に初めて開かれた「平和の語り部県大会」そこで披露されたのが、戦没者の孫などによる朗読劇です。

朗読される詩は西田さんが自らの体験などをベースにして作ったもので、有田町の平和祈念式典でも披露されました。

【出征兵士役 畔田宏治さん】
「どうか私の両親、妻、そして産まれてくる子ども、家族のことを本当によろしくお願い致します」

【出征兵士役 畔田宏治さん】
「ビルマで戦死してるんですよね、実際僕のおじいちゃんが、ちょっとこう感慨深いものがありますね」

西田さんのような1人で人前に立つことのできる語り部は少なく、担い手を確保するため取り組みやすい継承の形として朗読劇が企画されました。

【県遺族会青年部 荒田博記部長】
「1人でやるわけじゃないから分担しながら、協力しながらっていうところで、また皆さんにも繋ぎやすいんじゃないかなと」

“記憶の継承”には活動の広がりが求められる中、未来を担う世代による企画も進みます。

「ご遺族として後世に残したい記憶や思いなどをお聞かせください」

追悼式にあわせて戦没者遺族へのインタビューが行われましたが、聞き手をつとめたのは県内の中高生など19人です。

県が企画し、参加を呼びかけたプロジェクトに全員が自ら手を挙げました。
この日参加した生徒のうちの1人で、佐賀学園高校1年生の岳千尋さん。
きっかけは高校の歴史の授業で取り組んだ地元の史跡についてのレポートでした。

【佐賀学園高校1年生 岳千尋さん】
「朝からここに通って学校に通ってます」

吉野ヶ里町で生まれ育った岳さんが取り上げたのは、毎日のように見かけていた目達原飛行場の正門跡。
戦時中、特攻隊を志願する若者が訓練をこの場所で受けていたことを伝える石碑です。

【佐賀学園高校1年生 岳千尋さん】
「レポートでこの場所を取り扱う前までは全く知らなくてただあるみたいな、なんかもう日常に溶け込んでるみたいな。祖父が絶対このことは詳しいから話を聞けばレポートで絶対書けるって思って」
【岳さんの祖父 北村邦弘さん】
「特攻隊が訓練に来よったのも知っとるしね、要は子供のときにそこの飛行場に行きよったです」

岳さんの祖父で長年吉野ヶ里町で醤油店を営んできた北村邦弘さん86歳。
幼い日の戦争の記憶を孫に語ったのは初めてだったそうです。

【岳さんの祖父 北村邦弘さん】
「兵隊が死んでいくのも見てきとるけんね、ああいうようなことをね、あんま言いとうなかったね、次の時代にちゃんと言うて聞かせんなあかんかなと」
【佐賀学園高校1年生岳千尋さん】
「この場所に残酷な歴史っていうのが意外とあって吉野ケ里って遺跡のイメージが強すぎるけどそれだけじゃないんだ」

悲惨な地元の歴史に初めて触れたことで、もっと多くの人や場所から歴史を学びたいと、プロジェクトへの参加を決めました。

【佐賀学園高校1年生 岳千尋さん】
「おじいちゃんへのインタビューを自分がやって、今吉野ヶ里っていうここだけにとどまっているけど、佐賀県っていう全体で見たらまた違うんじゃないかなっていう。私がインタビューした人が武雄の人なんですけど、おじいちゃんの話す内容とは全然違う話が出てきたので」
【蒲地弘明さん】
「私の父が中国の桂林の近くで亡くなっていますのでなぜ私の父はそんな遠くに何のために戦いに行ったのかというのは子供心にずっと記憶に残っていまして」

生徒たちの戦没者遺族へのインタビュー内容は県が運営するSNSなどで随時公開されているほか、プロジェクトの参加者は今後県内外の戦跡をめぐり従軍経験者へのインタビューなど行なう予定です。

岳さんは“日常に溶け込んでいた石碑”の見え方が、これまでと変わったと話します。

【佐賀学園高校1年生岳千尋さん】
「戦争は全く関係ない人が亡くなってしまったり、全く関係ない土地がもうボロボロになってしまうことが良くないから、石碑はこの土地を守っていかないといけないよねみたい。先人の知恵を受け継いで、もっと視野を広げられるようになりたい」
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