2020/07/24 (金) 10:45

全国有数のナシの産地、伊万里市に今年もオープンした観光農園。農家の高齢化や後継者不足が深刻化するなか、「子供たちに自信を持って、楽しいぞと言いたい」。100年以上の歴史があると言われる伊万里梨の生産を担う若手農家の挑戦です。

伊万里市大川町立川100年以上続く伊万里梨の発祥の地といわれています。そんな大川町の田園の真ん中に今年も期間限定でオープンした観光農園。時期によって収穫できる品種が異なり今の時期はハウスで栽培されている早生品種の「温水幸太郎（幸水）」を収穫することができます。【地元の高校生】「ナシが収穫できるところは珍しいからいい」「（地元の）誇り。もっと知ってほしい。有名になっていろいろな人に来てほしい」

【大川三世代・田代慎仁代表】「（大川町は）生産者がだんだん減っている。後継者もなかなかいない」市内全体のナシの生産者はおよそ200人。20年ほど前のピーク時と比べると3分の1から半数程度に減少しています。また、後継者不足により市内2つある選果場は統合されることになり、南波多選果場で選果されるのは今年度が最後となりました。

【大川三世代・田代慎仁代表】「なんとか歴史あるナシを守りたいという思いだけ」そこで16年前に立ち上がったのが若手農家のグループ「大川三世代（おおかわさんせだい）」のメンバーです。平均年齢は40歳ほどメンバー4人ののうち3人はナシ農家の三代目、そして彼らを率いるのがナシ一筋34年目の代表の田代慎仁さんです。【大川三世代・田代慎仁代表】Ｑなぜナシ農家に？「そこにナシがあったから。生まれたときから周りがナシ畑で」「高校を卒業して2年間修行に行ってそのままずっと、ナシ一筋」しかし、メンバーの一人、大坪敬介さんは、【大川三世代・大坪敬介さん】「（子供の頃）親が休みもなく働いている姿を見てこうなりたくないなと」もともと全く違う仕事をしていましたが、16年前にナシ農家を継ぐことを決意しました。【大川三世代・大坪敬介さん】「最初のうちはしたくない方が大きかったが、徐々にナシが大きくなるのが楽しみだったり、収穫するときが楽しかったり、楽しみがすごくあった」【大川三世代・大坪敬介さん】「もっと儲かって潤って、子供たちにも自信を持って楽しいぞと言いたい」「自分たちが変えていきたい」

大川三世代は、年間80トンほどのナシを生産していて、ＪＡを通して出荷するほか、15年前には独自のブランドを立ち上げインターネット販売にも力を入れています。そして消費者の反応を直接聞くために始めたのが観光農農園です。【大川三世代・大坪敬介さん】「観光農園専用の低樹高のジョイント栽培のナシ園です」【大川三世代・田代慎仁代表】「ジョイント栽培と言って、ここで木と木を接ぎ木してつなげあわせている」「作業の能率アップと収量アップ、（低樹高のため）収穫が非常にしやすい。小さなお子さんから身長の高い人まで」メンバーそれぞれが時期をずらしながらナシ園を開放することに加え、最新のジョイント栽培を導入した観光農園専用のナシ園があるのも大川三世代の特徴です。

さらに…【大川三世代・田代慎仁さん】「上からミストで乳酸菌が出るようになっていて」乳酸菌栽培という珍しい栽培方法で、善玉菌の代表である乳酸菌をかけることで樹木自体が健康になり果実の持ちがよくなるといいます。病気や虫に負けない強い木に育つことで農薬を最小限に抑えることができるのが最大のメリットです。【大川三世代・田代慎仁さん】「とにかく農薬を減らしたい」「無農薬までは難しいけれどできるだけ農薬を使わないで、自然な形で作りたい」

また、この観光農園にはもう一つの魅力が…それは隣接するおしゃれなカフェでゆっくりくつろげること。ロールケーキやチーズケーキなどとれたてのナシを使ったスイーツを堪能できます。【大川三世代・田代慎仁代表】「今までと一緒の農業じゃない形を作りたい。目指せ200年」「伝統ある伊万里梨を守りたい。地域全体が盛り上がるように自分たちが起爆剤となって盛り上がることを望んでいるそれだけ」観光農園は１０月中旬ごろまで入場料は無料で今月（7月）25日までのハウスものは1キロ800円、26日以降の露地ものは1キロ600円で持ち帰ることができます。大川三世代ではナシを１年中味わってほしいと今年は加工品作りにもより力を入れていくとしています。また、観光農園の利用は事前予約がおすすめです。0955・29・2612