佐賀のニュース
「右にならえ」社会のもろさ 思考停止がまん延してはいないか【はがくれ時評】
2022/05/09 (月) 14:40
社会のため、世界のため、地球環境のため、といいながら、単に「右にならえ」して時流に乗るだけの風潮が目に余る。物事を深く考えない、思考停止がまん延してはいないか。
5月から「クールビズ」の季節となった。本来はエネルギー節約が主眼で、何を着るかなどそれぞれ個々の判断のはずなのに、なぜか標的は男性のネクタイに集中している。17年前に官主導で始まったころは、「ノーネクタイは無礼」との議論も多く見られたが、今ではすっかり「無礼が常識」に変わってしまった。幼いころから知る若者は、疑問さえ抱かない。「なぜ、ネクタイをしているの?」と、まるで反逆者に見られる風潮は、今年も続く。
マスクの方は逆に着けていないと白眼視される。某市議会でノーマスク議員をワイドショーが面白おかしく取り上げるが、義務化ではないから別に問題ではない。コロナも3年目になり、日本は欧米に比べると特に死者数は圧倒的に少ないから、「屋外などでは外すべし」と主張する専門家も多い。着用理由も「感染防止」より、「みんなが着けてるから」という「右にならえ」が圧倒的に多いとの調査もあり、マスク全体主義は日本のお家芸である。
戦火を逃れてウクライナからはるばる日本へやってくる避難民に対して、ふるさと納税で支援しようという自治体が「右にならえ」で相次いでいる。もともと問題の多い制度で、ここではその議論は脇に置くが、本来のふるさと支援から時流に乗ってウクライナ支援に脱線し、まるで市町が「慈善団体」になっている。納税する方も、避難民支援というより節税が目的だから、邪(よこしま)さがのぞく。まともな自治体がやることではない。
流行りのSDGsしかり。「持続可能な開発目標」というより、レジ袋有料化に見られるようにビニール追放合戦に矮小化されている。もともと2000年に始まった「MDGs」(ミレニアム開発目標)の二番煎じで、一向に成果が上がらないから2年前にリニューアルされた。本来は文明生活そのものを見直す作業だが、個人も企業も政治も、右にならえの「やってる感」で問題からスルーしている傾向が強い。バッジを付けただけの運動参加も多い。
「右にならえ」しない生き方もあってほっとする。身の回りのモノを思い切って廃棄する「断捨離」は、その潔さ、シンプルさがもてはやされて久しいが、作家の五木寛之氏は今年、この風潮に異を唱える「捨てない生き方」を書いた。モノは、友や音楽や景色など個人の記憶とともにあり、その記憶を思い出すことで生きる活力が生まれる、というのだ。大量消費社会は「捨てる」のが前提だが、捨てないことに価値を置こうとのメッセージが心地よい。
ひとは個人では弱く、もろい。御上(おかみ)が言うから、国連が決めたから、社長が言うから、と流される方が楽である。でも実は、「右にならえ」一辺倒の集合体になると、全体としてはもろく、壊れやすくなる。学校も、企業も、そして政治も―。
「人は弱いから群れるのではない。群れるから弱いのだ」昭和にルポライター、評論家として生きた竹中労の言葉を、令和の今、再びかみしめる。
5月から「クールビズ」の季節となった。本来はエネルギー節約が主眼で、何を着るかなどそれぞれ個々の判断のはずなのに、なぜか標的は男性のネクタイに集中している。17年前に官主導で始まったころは、「ノーネクタイは無礼」との議論も多く見られたが、今ではすっかり「無礼が常識」に変わってしまった。幼いころから知る若者は、疑問さえ抱かない。「なぜ、ネクタイをしているの?」と、まるで反逆者に見られる風潮は、今年も続く。
マスクの方は逆に着けていないと白眼視される。某市議会でノーマスク議員をワイドショーが面白おかしく取り上げるが、義務化ではないから別に問題ではない。コロナも3年目になり、日本は欧米に比べると特に死者数は圧倒的に少ないから、「屋外などでは外すべし」と主張する専門家も多い。着用理由も「感染防止」より、「みんなが着けてるから」という「右にならえ」が圧倒的に多いとの調査もあり、マスク全体主義は日本のお家芸である。
戦火を逃れてウクライナからはるばる日本へやってくる避難民に対して、ふるさと納税で支援しようという自治体が「右にならえ」で相次いでいる。もともと問題の多い制度で、ここではその議論は脇に置くが、本来のふるさと支援から時流に乗ってウクライナ支援に脱線し、まるで市町が「慈善団体」になっている。納税する方も、避難民支援というより節税が目的だから、邪(よこしま)さがのぞく。まともな自治体がやることではない。
流行りのSDGsしかり。「持続可能な開発目標」というより、レジ袋有料化に見られるようにビニール追放合戦に矮小化されている。もともと2000年に始まった「MDGs」(ミレニアム開発目標)の二番煎じで、一向に成果が上がらないから2年前にリニューアルされた。本来は文明生活そのものを見直す作業だが、個人も企業も政治も、右にならえの「やってる感」で問題からスルーしている傾向が強い。バッジを付けただけの運動参加も多い。
「右にならえ」しない生き方もあってほっとする。身の回りのモノを思い切って廃棄する「断捨離」は、その潔さ、シンプルさがもてはやされて久しいが、作家の五木寛之氏は今年、この風潮に異を唱える「捨てない生き方」を書いた。モノは、友や音楽や景色など個人の記憶とともにあり、その記憶を思い出すことで生きる活力が生まれる、というのだ。大量消費社会は「捨てる」のが前提だが、捨てないことに価値を置こうとのメッセージが心地よい。
ひとは個人では弱く、もろい。御上(おかみ)が言うから、国連が決めたから、社長が言うから、と流される方が楽である。でも実は、「右にならえ」一辺倒の集合体になると、全体としてはもろく、壊れやすくなる。学校も、企業も、そして政治も―。
「人は弱いから群れるのではない。群れるから弱いのだ」昭和にルポライター、評論家として生きた竹中労の言葉を、令和の今、再びかみしめる。
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