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浸水と共存という発想の転換から生まれたトマト栽培方法とは? ヒントは聖書【佐賀県】
2022/07/19 (火) 16:21
唐津市で2018年から2年連続、浸水被害を受けたトマト農家の男性が独自の水害対策を行っています。水害を防ぐのではなく、共存するという発想の転換から生まれた栽培方法とは?
【橋爪記者】「唐津市にある石志地区です。この地域では大雨の時、隣を流れる徳須恵川にうまく水がはけられず内水氾濫が相次いでいます。この地域である水害対策に取り組んでいる農家がいるんです」
唐津市の石志地区で、フルーツトマトを栽培している吉田章記さん44歳。就農してわずか2年、2018年から2年連続で浸水被害を受けました。
【トマト農家吉田章記さん】「あちら(川)の方から徐々に水が溜まっていって田んぼの区画が全く分からないくらい、一面湖みたいな状態ずーっと水が来てハウスも浸水していく。このぐらいの水位で浸かる」
約2000平方メートルのハウスは15センチほど浸水。根腐れなどで枯れてしまい、6割以上の苗を廃棄したといいます。
【トマト農家吉田章記さん】「10年に1度の大雨の時に当たったんだと思って次の年を迎えて、次の年も被災した時にはさすがに『どうしよう』と。企業体力もないうちに水害・水害・水害なので『辞めないといけないのかな』と」
そこで吉田さんは被害を食い止めようと、独自の対策を行っています。
【トマト農家吉田章記さん】「この栽培方法は、ほぼ全ての材料が発泡スチロールでできている。”簡単に浮く”ようなシステム」
全国的にも珍しい”浮かせる”水害対策。その大きな特徴は栽培用の土台にありました。
【吉田さん】「どうぞ持ち上げてみてください、すごく軽いので」
【橋爪】「わっ、本当だ。簡単に持ち上がりますね」
【吉田さん】「1キロ無いくらいの重さになっているので、すごく簡単に持ち上げることができます」
【橋爪】「もっと重たいのかなと…」
吉田さんは土台に発泡スチロールを活用し、土をヤシ殻に変えることで軽量化を実現しました。15センチ以上浸水すると、柱の一部は簡単に取れて土台が浮く仕組みになっています。また、上からつるされた紐で苗を固定しているため、水が引いた後、浮いた土台は元の位置からずれることなく着地するということです。
浮かせる発想のヒントになったのは、なんと聖書。
【トマト農家吉田章記さん】「『水害だったら”ノアの箱舟”やん、浮かせるしかないっちゃない?』という半分投げやりな会話の中できっかけが。『あっ、浮かせよう、本当に浮かせてみよう』と思ったのが発想のきっかけ」
水害を防ぐのではなく”水害と共存する”という発想の転換から生まれた栽培方法。子供用プールで半年間、試行錯誤しながら、吉田さんは2020年、約300万円かけて完成させました。
完成から1年たった2021年8月14日。県内に大雨特別警報が発表され、ハウスにもこれまでの倍以上、約30センチの高さまで水が流れこみました。想定を超える水位で恐る恐るハウスを見に行ったところ奇跡が。
【トマト農家吉田章記さん】「正直、この水位だったら『浮いてくれなかったらアウト』と思っていた。見た瞬間、トマト自体普通の状態だったので、本当にうれしかった」
なんと、独自の”浮かせる”対策は成功!苗は全く浸かっていませんでした。約5センチ浮いたことが分かったといいます。
【トマト農家吉田章記さん】「後ろは蛇行して倒れたりしないかとかいろいろ心配していたが、戻ってきたときはこの状態でまっすぐ下りていた。今年は栽培を続けることができた」
この栽培方法が評価され、現在、スマート農業を推進する兵庫県の企業と共に、モンスーンなどで大雨の被害を受けるインドでも実現を目指そうと、実証実験が始まっています。
【トマト農家吉田章記さん】「何もしていない時だと『来ないでくれ』『降らないでくれ』と思うことしかできなかったが対策を打つことで、『これをこうしておけばこの辺くらいまでは耐えられる』とか、ある程度、自分の力でも抗うことができる。気を引き締めながら、大雨と共存する、この変化に対応できるような栽培を続けていきたい」
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