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節水ならぬ「節油」対策 “農業県”佐賀では死活問題 油代だけで年間1000万円増の農家も【佐賀県】

2023/10/26 (木) 18:18

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高騰する燃料価格についてです。
その影響は車のガソリンなど生活利用だけではなく、“農業県”佐賀にとって大きな課題になっています。経費を削減するため農家が取り組む、節水ならぬ「節油」対策を取材しました。

【うれしの茶農家・田中繁昭さん】
「3円でも上がると厳しい。とにかくいっぱい重油を使うので」

【ミカン農家・大場博紀さん】
「単純に経費が上がりますから大変ですよ」

ロシアによるウクライナ侵攻や急激な円安に端を発した燃料価格の高騰。
自家用車のガソリンなど市民の生活利用だけではなく、“農業県”佐賀には大きな影響があります。

【ミカン農家・江川玄徳さん】
「必ずいる経費なので、どうしてもコストは丸々上がってしまうのでとてもきついですね」

農業で主に使われる重油。
全国の平均価格でみると3年前は1リットル当たり74.6円、それが、今年8月には117.6円と1.6倍に上がっています。
ただ、重油は国や県、JAが使用量に応じて価格を均一に決めるため安く仕入れるなどはできません。
そこで、農家側でコントロールできるとすれば…使う量を節約する、つまり“節油”するしかないんです。

唐津市浜玉町の農家大場博紀さん37歳。
サッカーコート9個分の敷地でハウスミカンを栽培、年間約150トンを生産しています。

【大場博紀さん】
「油代だけで年間1000万円くらい上がっています。5年、6年前くらいからですね」

ハウスミカンは年間を通してハウス内を23度ほどに保つ必要があり、欠かせないのが加温機です。

【大場博紀さん】
「去年導入した分で、ガス焚きの加温機。通常A重油を使うんですけど、これはLPガスを使って加温するというものですね」

ほかにも、大場さんは7年ほど前にヒートポンプと呼ばれる電気やガス式のエアコンを導入。しかし…

【大場博紀さん】
「電気代の同時に上がったと、LPガスも上がったと、すべて上がったと、だから思った通りにはならない」

重油だけではなく様々な燃料価格が軒並み上がり、設備投資による節油対策は思うようにいかないといいます。
そんな中、効果を出しているのはハウス栽培ならではの案外“アナログ”な方法でした。

「保温が大事なのでこういう風にして一層目、一番外を覆っている状態。扉を開けるとこれが二層目になるんですけど、これ自体もエアプラスといって中に細かい空気の層がある断熱資材になります。その下にもう一層ビニールをして三層構造を作っています」

この対策で、以前と比べて約2割重油が節約できているといいます。
ただ、値上がり分をカバーするには到底足りず、経費は上がり、利益は減る一方。それでも、大場さんは唐津のハウスミカンを守りたいと話します。

「ハウスミカンって日本一なんですよ佐賀県が。父の代もおじいちゃんの代も自分が見てきているので守っていきたい」

一方こちらは、嬉野市の茶農家・田中繁昭さん62歳です。

【田中繁昭さん】
「2台あるけん1日100リットルとかじゃないですかね」

茶の栽培では主に収穫と剪定の機械に重油ではなく軽油を多く使います。

【田中繁昭さん】
「ずっと畑をまわるので効率よく畑をまわる。あっちいったりこっちいったりしないようになるべく近いところから」

1リットルあたりの軽油価格は3年前の133円から15円の値上がり。
まずはできるところから節油に取り組んでいます。
一方、田中さんは近隣の13戸の茶農家でつくる茶業組合に所属していますが、個人ではなく組合としての対策も始めました。

【田中繁昭さん】
「二番茶を個人さんのを工場に寄せて、なるべくコストを下げようという取り組みを今年から始めた」

目を付けたのが重油を多く使う茶葉の加工。
うれしの茶では個人で行う農家も多くいますが、一番茶、いわゆる新茶を採り終えたあとの二番茶、三番茶は販売価格が下がり、加工費が大きな負担になるといいます。
そこで組合の加工工場に集約し、総量を増やすことで作業効率を高める作戦です。利用する茶農家は…

【茶農家】
「コスト的には大分抑えることができました。茶価は下がる一方でですね、厳しかったですね。」

重油や軽油の価格が上がる一方、茶の販売価格はこの15年で20パーセント下落しました。
必要経費をなんとか抑えながら特産のうれしの茶を消費者に届ける…各農家が奮闘しています。

一方、農業の“新たなエネルギー”を模索する動きも。
こちらの農園でおととしから行われているのは“地中熱”をハウスミカン栽培に使う国と県の実証実験。
初期費用は約7000万円、地中熱を使った空調システムです。

【ハウスミカン農家 江川玄徳さん】
「地中熱利用型のヒートポンプというところで、6カ所100メートルほどの穴を掘って、地下から熱を取ってきて」

年間を通して一定だという地中の温度。
地上に比べて夏は冷たく冬は暖かいため冷房や暖房に利用できます。

【江川玄徳さん】
「地下で温めた水をこの管を通して畑の中まで持ってきていて。温かくなっているお湯を風に変換してハウスの中に温かい熱を送っている状態です」

重油を使う加温機の使用を完全にゼロにはできませんが、導入前と比べて重油の使用料は1万リットル近く減りました。
金額に換算すると約120万円です。

【県産業グリーン化推進グループ 佐保幸伸推進監】
「佐賀県というのがですね、地中熱のポテンシャルというのは高いんですね、県内全域で農業というのもされておりますので、そういった意味で農業分野の活用というのも進めていかないといけないだろう」

深くまで穴を掘る必要があり、設備投資は高額な地中熱ですが、今後の技術の進歩や農家での共同利用など代替エネルギーとして大きな可能性を秘めています。

【江川玄徳さん】
「こういう新しい省エネ方法を取り組んでいかないと、今後10年とか20年後の自分たちの農業は厳しくなるんじゃないかな」
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