2024/01/09 (火) 18:40

7日まで大阪府で開かれた全国高校ラグビー"花園"に出場した佐賀工業。準決勝で強敵東福岡に敗れましたが、大会3位という過去2番目の好成績を残しました。

【佐賀工業 仁位岳寛部長】
「只今からジャージ渡しを行います」

大会を目前に控えた12月24日、創部79年、佐賀工業ラグビー部の伝統の「ジャージ渡し」です。

【仁位部長と中川内選手】
「中川内優太！」
「はい！ありがとうございます。花園では1試合1試合を死ぬ気で戦って、不撓不屈のコンタクトプレーで優勝に貢献できるよう頑張ります」

誰もが目指す「花園」に向けて、メンバー入りした部員がこのとき明されていきますが、70人余りの部員のうち25人しか選ばれません。
出発の日、部員のリュックについているのは、マネージャーの諸冨陽華里さんがひとつひとつ手作りしたお守りです。

【佐賀工業1年マネージャー 諸冨陽華里さん】
「（制作期間は）1カ月。きょうも3時半まで作りました。（用意したのは）55個ですね。1分1秒でもみんなと一緒にいられる時間が増えたらいいなと思います」

そして聖地花園での戦いが始まります。初戦となった2回戦では、宮崎県の高鍋を。3回戦では強力なフォワードをもつ東京都の目黒学院を撃破。佐賀工業は伝統のフォワードとバックスが一体となった全員ラグビーで3年連続となる準々決勝へ。

相手は前回の大会でも対戦し、9対8という薄氷の勝利だった中部大春日丘です。
試合開始直後、パスを供給する役割の井上達木が自らボールを持ち込んで先制トライ。
さらにフォワードの要、古賀大輝が力でねじ込みます。

【佐賀工業3年 古賀大輝選手】
「（トライの場面は）練習してきたので、そこは自分が狙いました。良い感じで準決勝につなげられたらと思います」

そして佐賀工業は23年ぶりの準決勝へ。悲願の初優勝を前に戦うことになったのは、前回の花園を制した強豪東福岡です。
去年10月の鹿児島国体の決勝で佐賀工業は東福岡を主体とする福岡選抜と対戦。7月に行われた7人制ラグビーで初優勝を飾っていた佐賀工業は勢いそのままに終盤までリードしますが、試合終了まで残り2分で逆転され、わずか1点差で優勝を逃しました。

【佐賀工業 枝吉巨樹監督】
「先輩が残してくれた不撓不屈というのを皆さんに見せたいし、そしてそれで勝利をもぎとりたいと俺は思っている」

それから3カ月。試合を前にした選手たちの表情には鬼気迫るものがありました。

【佐賀工業3年 大和哲将主将】
「相手は東福岡。ずっと負け続けている相手なので必ず勝ちたいと思います」
【佐賀工業3年 井上達木選手】
「自分たちは日本一を目指しているので、自分の最高傑作は次の試合。あすは勝つことを優先していきたいです」

【リポート・波佐間崇晃】
「いよいよ佐賀工業は決勝進出をかけて強敵との大一番を迎えます」

全国で3チームにしか与えられないAシード同士の対決。チームが擁する高校日本代表候補は佐賀工業が6人、一方の東福岡は12人です。先制したのは東福岡でした。コンタクトの強さを前面に出し、佐賀工業のディフェンスラインを一気に突破します。
5点を追いかける佐賀工業は前半7分、相手陣内の深い位置で反則をもらうと、キッカーは「五郎丸2世」とも呼ばれる井上達木。落ち着いてペナルティゴールを決めて差を2点に縮めます。その直後には高校ラグビー3大大会のひとつ7人制ラグビーでMVPの服部亮太。一瞬の隙を狙ってドロップゴール。高校日本代表候補2人の得点で6対5と逆転に成功します。
しかし、ここから東福岡が怒涛の攻撃で再逆転。最大で34点差がついた後半。意地を見せたい佐賀工業は2年生の内田慎之甫が奮起します。内田は後半だけで3つのトライを奪い、"不撓不屈"のプレーを見せます。
あまりに大きい東福岡の背中は最後までとらえられませんでしたが、佐賀工業は2000年度大会の準優勝に次ぐ花園3位という成績を残しました。

【佐賀工業3年 服部亮太選手】
「この悔しさは佐賀工業のみんなしか味わえていないと思うので、一人一人がこの悔しさをバネに頑張っていきたい」
【佐賀工業3年 井上達木選手】
「3年間佐賀工業でお世話になっていろんなことを学んで、（同じキッカーの）五郎丸歩さんを追いかけプロを目指して頑張りたい」
【佐賀工業3年 大和哲将主将】
「チームのみんなは体をはり続けてくれて、3年間で培った不撓不屈を見せてくれたと思うんですけど、自分は…。こんなチームはないと思う。本当に最高のチームです」

翌日、佐賀駅では大勢の関係者が健闘を称えようと出迎えていました。7人制優勝、国体準優勝、そして花園3位。花園優勝は叶いませんでしたが、チームが残した軌跡は多くの人の心に刻まれました。