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“あたたかい家庭当たり前に” 入所理由の9割は虐待 子供の居場所守る男性の思い【佐賀県】

2024/04/01 (月) 18:18

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両親がいなかったり、虐待を受けたり、複雑な事情から子供たちが一つ屋根の下に暮らす児童養護施設。県内では3月1日現在5カ所で100人あまりが生活をしています。保護者の代わりとして子供に寄り添う職員の姿を追いました。

【佐藤裕侑さん】
「はいじゃあみなさん配膳しますよ~。お願いします」

食卓を囲む子供たち。次々とご飯をほおばります。
ここは、基山町にある児童養護施設「洗心寮」です。

【佐藤裕侑さん】
「子供たちにとってはここが居場所なので、当たり前のことを、当たり前に。意識せずにやれるようになることが大事なのかなと」

保護者の代わりに子供たちと生活を共にする児童指導員・佐藤裕侑さん40歳。
この春また、18歳を迎えた子供たちを送り出しました。

【高校3年生】
「家みたいに過ごしやすくていい場所だった」
【高校3年生】
「本当に忘れないと思うし、本当に感謝してます」

「ただいま~」「おかえり!どうでした?学校は」

午後3時。男子棟を担当する佐藤さんの慌ただしい1日が始まります。
「ナイスボール!」

学校から帰ってきた子供たちとキャッチボール。
心の距離を縮める大切な時間です。

【佐藤裕侑さん】
「1対1の時間をあえて作って『最近どう?お兄さんから見たらちょっと表情暗そうに見えるよ。最近めっちゃ楽しそうだけど何かいいことあった?』とか聞ける環境をなるべく作るように。毎日はできなくても、意識してやっている」

県内に5つある児童養護施設。
このうち「洗心寮」では3歳から18歳までの20人余りが一つ屋根の下、寝起きを共にしています。
施設に入る理由の9割は…家庭内の“虐待”

【小学5年生男の子】
「3歳くらい?に来た、何も覚えてない。みんな笑顔でいるから、つらい時遊んだりして解消できる」

つらい過去の経験から、自分の存在を否定的に捉える子供たちが多いといいます。

【佐藤裕侑さん】
「一方的に叱られて、怒られて怒鳴られてという形になると自分の気持ちを言葉にすることができない、言葉にすることによって『怒られるんじゃないだろうか』『大人がどう感じるんだろうか』と考えすぎてしまって結果的に言葉にできなくなる」

「合掌。深く喜び、ありがたくいただきます」

子供たちの心の傷を癒し、自立させていく。
そのためには1日3食あたたかいご飯を食べる、一緒に遊ぶなど、ごく平凡な日常を積み重ね寄り添うことが大切だといいます。

Q.ここに来られてどう?
【小学6年生】
「よかったです。いっぱい外で遊べたり、一緒にご飯が食べられる。めっちゃ楽しいし、いろいろなことが知れるからいい」

元々、子供に関わる仕事に携わりたかったという佐藤さん。
19年前の2005年に児童指導員となり、のべ150人の子供たちを担当してきました。

【佐藤裕侑さん】
「子供の“生活”に携わる仕事は児童養護施設しかない。『あの時ああ言ってもらったからよかった。今めちゃくちゃ役に立ってるよ』と、子供たちに言ってもらえる時『ああよかったな』と。やりがいというか…ほっとする」

ほかの職員とともに早出や遅出、宿直などシフトを組んで子供たちに寄り添います。

【佐藤さん】
「2000円と1000円ね、きょう」
【男の子】
「まじか!」
【佐藤さん】
「うん、今それしかないもん。分かっとったやん?」
【男の子】
「ええ~~」

日曜日、佐藤さんは子供たちを乗せて車を走らせます。

【佐藤裕侑さん】
「優先事項決めとってよ。全部あったとしたら、全部買えないと思うから」

向かった先は鳥栖市の商業施設。
一見ただの買い物にも見えますが、大切な意味があります。
年齢に応じて国から生活費の支給を受ける子供たち。
しかし施設を出た後は1人で生活しなければなりません。

金銭感覚を養うため、佐藤さんはあえて自分自身で支払うよう促します。

【佐藤裕侑さん】
「当たり前を当たり前に教えてあげられる環境づくりが大事だと思っているので、やっています」

【校長先生のあいさつ】
「113名のみなさん、ご卒業おめでとうございます」

施設の中にとどまらず、“学校行事”にも保護者として参加します。
この日は基山小学校の卒業式。子供たちの晴れ舞台です。

【佐藤裕侑さん】
「堂々と卒業証書をもらっていたのでよかったなと、子供たちは自分たちの力で成長してくれているなと改めて感じた」

【調施設長のあいさつ】
「卒業、おめでとう。専門学校を見据え、高校から帰ってきてすぐにアルバイトに自転車で漕いでいく姿に『がんばれ!』と思うことばかりでした」

「洗心寮」でも卒業を迎える子供たちの激励会が開かれました。
この春18歳を迎える一部の子供たちは施設を巣立ち、1人の大人として生活していきます。

【高校3年生】
「夢は自分のお店を持つこと。飲み物とかスイーツとか出したい」

【高校3年生】
「とても話しやすい、なんでも相談できる関係だった。自分がやりたいことも頼んだらしてくれたり、楽しく過ごせた」

【高校3年生】
「洗心寮に入っていなかったらまた違う性格になっていたかもしれない。本当に忘れないと思うし、本当に感謝してます」

“あたたかい家庭を当たり前に”子供たちに寄り添う佐藤さんの日々はこれからも続いていきます。

【佐藤裕侑さん】
「寮から自立をするのが本当に一大事。本当に人生の中で大きなことなので、“背中を押す第一歩目”『あそこ(寮で)育ったから今これだけ頑張れる』と言える思ってもらえるような支援をしていかないといけない」
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