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技術継承へ…大物ろくろ師の陶芸家 陶山神社の水がめの再現に挑戦【佐賀県】

2023/03/20 (月) 18:40

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県内で何かに奮闘する人をクローズアップする佐賀人十色。今回は有田町で大物ろくろ師として活動する陶芸家の男性を紹介します。若手への技術継承を目指し陶山神社の水がめの再現に挑戦しました。

【橋爪アナウンサー】
「有田町で白磁の展示会が開かれています。中でも目を引くのがこちらの作品白磁の水がめです。高さ・直径ともにおよそ1メートルの大物です」

緻密な手彫りの模様に滑らかな白磁の水がめ。3月完成したばかりで、焼き物の産地・有田町でもこれほど直径が長い作品は珍しいといいます。
製作したのは大物ろくろ師と6人の若手陶芸家。「有田の文化をつなぐ」という願いが込められています。

【奥川俊右ェ門さん】
「それぞれ感じ方は違うと思いますけど、“ここまでできるようになった”というところを見てもらえたら」

焼き物のまち、有田町。
大物ろくろの名手で「現代の名工」に認定されている奥川俊右ェ門さん74歳です。奥川さんは有田町に生まれ育ちもともと大物に興味があったといいます。

【奥川俊右ェ門さん】
「自分の焼き物を作りたいために、大物を習いに忠右ェ門の所へきた。自分を遺せる仕事はないですからね」

20歳のころ、国の無形文化財で初代・奥川忠右ェ門さんに師事し、1979年に独立した奥川さん。花の模様が緻密にかたどられた花瓶など大物の白磁の制作に取り組み、2005年には黄綬褒章を受章しました。
有田窯業大学校で講師を務めるなど若手の育成にも力を注いできましたが、いまや大物ろくろをつくれる人は有田町でも奥川さんだけ。大物ろくろ技法の将来に不安を感じていました。

【奥川俊右ェ門さん】
「できるかできないかも分からないし、焼き上がって商品になるか保証がないから(大物作りを)しないんですよね。“技術を伝えんといかん”どうしても型とか機械とか大量生産になると中国などに負けてしまう」

そこで、技術を若い陶芸家に引き継ぐため2017年から始まったのが県の「高度ろくろ研修」。その集大成として奥川さんは6人の研修生とともに初代・奥川忠右ェ門が得意としていた大物作りに挑戦することに。その目標にしたのは明治22年に作られた陶山神社にある直径1メートル近くの水がめです。

【奥川俊右ェ門さん】
「1メートルを超えるような径の焼き物なんて作ったことない。私も生徒と一緒で初めての経験ですから、なんとか見よう見まねで作りましたけど、横に広げるのが一番難しいので広げるのが一番苦労した」

重さはなんと120kg。電動では回らないので大人3人がかりでろくろを回していきます。
初代・奥川忠右ェ門の水がめはすべて水害で失われたため、資料は一切残っておらず、頼みの綱は奥川さんが手探りで書いた設計図だけ。約1カ月かけて3つのブロックを繋ぎ合わせ、直径1メートル10センチの水がめの形が完成しました。

【研修生】
「体力的に筋肉痛になりながら作ったのですごく大変な作業だった」
「力の加減とか指づかいとかちょっとしたところが目の前で見ないと学べない大事なところ(経験)だった」

迎えた窯出しの日。奥川さんと研修生たちの表情は険しいままです。
水がめを見ると、外側に付けていた三つ巴が全て落ちています。さらに底には大きな亀裂が…厚さがわずかに均一でなかったこと、熱で収縮したことが原因とみられています。

【奥川俊右ェ門さん】
「いや…最悪ですねまさかこれ(三つ巴)がみんな取れるとはですね…外れるとは予想もしとらんやった」
Q・新たな発見もありつつ…
「改めて大物作りの難しさが身にしみてわかりますね」

水がめが焼きあがった10日後。奥川さんや研修生たちは成果展の準備に追われていました。
水がめの三つ巴やひびはセメントなどで修復。「これが自分たちの技術の現在地」という意味も込め展示の目玉としてあえて中央に飾りました。

【研修生】
「一生懸命やった結果。ショックはあったが、そのあと頑張って修正しようと協力して作り始めから最後までできた」
「これだけ大きい作品が揃っている。ダイナミックな空間も含めて見てもらえたら」

成果展当日。窯業の関係者や大学生など来場者の目線の先は水がめで、誰もが興味津々です。

【見に来た人】
「すごいでかいなというのが第一印象で、縦に長いのは時々あるが、こんなに太いのは見たことない」
「ちょっと剥がれたりしているので、それだけ大変だったんだなって、難しいんだなって、技術の高さと難しさを感じた」

「高度なろくろの技術を後世につなぎたい」奥川さんと6人の研修生による挑戦の集大成は3月24日まで有田町で見ることができます。

【奥川俊右ェ門さん】
「技術を伝えてもらいたい、つないでもらいたいという気持ち生徒たちが2歩、3歩と前に進んでくれたらいい。それが伝統じゃないかと」
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