2023/06/05 (月) 18:40

情報公開制度を通じて、行政や議会の監視活動を続けてきた「市民オンブズマン佐賀」が今年3月末に、解散しました。いわゆる公金のムダ遣いが大きな社会問題となった30年ほど前に、市民による監視網が全国に広がり、佐賀では1995年から活動を続けてきました。最近では、マスコミでオンブズマンという言葉を聞くことも少なくなってきましたが、行政への監視は不可欠です。

宮原解説主幹とともにお伝えします。

【宮原解説主幹】
まずはこの三つの昭和ことば、分かりますか？
今から30年ほど前は、こうした税金のムダ遣いが大手を振っていました。今はかなり是正されていますが、監視役を続けてきたのがオンブズマンです。オンブズマン佐賀の事務局長を長く務めた、味志陽子さんも高齢となり、今回組織の解散となりました。味志さんに27年間を振り返ってもらいました。

【宮原解説主幹】
「95年にスタートしたオンブズマン佐賀。当時は官官接待、食糧費問題を追及されました。印象に残ることは何ですか」

【味志陽子氏】
「これからオンブズマン活動をやるというのはどういうことか、といきなり責任がのしかかった。単なる一市民がこんなことやっていいのか、と。非常に重大な責任を感じてしまった人の財布を見るようなもの。そんなことするのに、チャラチャラしてはいけない。厳粛な気持ちでやらないと、と重大な決意でした」

【宮原解説主幹】
「作業としてはエネルギーが要る仕事。一番大変だったことは？」

【味志陽子氏】
「（県に）情報公開請求して支出の公文書を、数枚だったらいいが、県のコピー費になると、確か何百枚だった。それを計算しながら、月にいくら使ってるかを、ずーっと集計して、一覧表にして、どこかおかしいところはないか、とみたらおかしいところがたくさんある月に90万枚コピーしたとか。そういうのもあるかもしれないと思って聞くと、「そりゃ必要だったからするさい」「あの年は台風がたくさん来たから、そういう作業は必要だった」と台風のことを気象台に聞くと、あの年は佐賀には通ってなかった、と。すぐばれるようなうそをつくわけですね」

【キャスター】
県の架空コピー費は大きな問題になりましたね。

【宮原解説主幹】
そうですね。総額6億円以上の不正を、オンブズマンが暴きました。当時は全国で使われた官官接待の総額は300億円とも言われました。役人が役人を飲ませ食わせするために、裏でカネを作る。行政内部の「慣行」になっていたんですね。
オンブズマンの地道な活動を経て、お役所の体質は変わったんでしょうか。

【宮原解説主幹】
「そういうオンブズマン活動を経て、役所の体質も変わったという印象ですか」

【味志陽子氏】
「20年以上（外部の監視に）さらされてると変わらざるを得ないと思いますし、95年から始めて、97、98年にはすっかり緊張関係が出来上がって。そういうこと（不正）をやっちゃいけないというのが、ありありと出ていました。それまで営々と続けられていたときは、どっぷり浸かっていれば、気持ちが鈍感になるというか、「ま、いいか」というのがあったと思うが、指摘されて世間から批判が出てくると、行政側も何だったのかというのがあったと思う」

【宮原解説主幹】
「27年間やってこられたが、まだやり残されてることはありますか？」

【味志陽子氏】
「議会の政務活動費の問題がね。議員の支出を証明する領収書を全部公表してもらうとか、そういうのがあったら、そこまでたどり着きたいが、なかなか敵もさるもので…。頑なですもんね」

【宮原解説主幹】
「本来オンブズマンの監視機能というのは、議会でありマスコミであるんですが、その議会が議員に当選すると、向こう側に行ってしまうということですか」

【味志陽子氏】
「おカネを握ったような気持ちになるんでしょうね。1円たりとも自分のポケットマネーと違いますから。政務の調査をする費用なんです。それをやってる議員さんもおられます。ただ、あとはまるで「第二の報酬」という調子で使いっぱなし」

【宮原解説主幹】
情報公開の究極の実践例は、寿司屋と言われます。寿司屋は、握りのネタやシャリ、包丁からまな板まですべてお客さんから丸見えです。客から見られると、店側も清潔にし、料理も丁寧にし、結果として客も納得する。味志さんが心残りと言った、県議の政務活動費の情報公開も不十分です。ネットでは公開せず、議会事務局にわざわざ出向いて閲覧しなければなりません。県民のみなさんにぜひお願いしたい。一度政務活動費の閲覧をしていただきたい。コインパーキングの領収書100円。新聞代。雑誌代。政務活動費を通じて、議員の実態がよくわかります。お薦めです。